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住宅宿泊管理業はどうすれば始められる?住宅宿泊管理業を始めるために必要な要件を解説!

(記載:2024年11月22日)

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。

今回は、「住宅宿泊管理業はどうすれば始められる?住宅宿泊管理業を始めるために必要な要件を解説!」というテーマで、住宅宿泊管理業を始めるために必要な基礎知識や登録に必要な要件についてご案内します。

この記事は、住宅宿泊管理業について詳しく知りたい方や、住宅宿泊管理業を始めてみたい方に読んでいただきたいに内容になっています。

それでは早速見ていきましょう!

住宅宿泊管理業と住宅宿泊管理業者

まず初めに、「住宅宿泊管理業」と「住宅宿泊管理業者」について住宅宿泊事業法(以下、法)では、どのように定義されているかを確認してみましょう。

第2条第6項
この法律において「住宅宿泊管理業」とは、住宅宿泊事業者から第11条第1項の委託を受けて、報酬を得て、住宅宿泊管理業務を行う事業をいう。

第2条第7項
この法律において「住宅宿泊管理業者」とは、第22条第1項の登録を受けて住宅宿泊管理業を営む者をいう。

これらの条文を見ると、住宅宿泊事業者から委託を受けて住宅宿泊管理業務を行う事業のことを「住宅宿泊管理業」といい、「住宅宿泊管理業」を行う事業者のことを「住宅宿泊管理業者」いう、というところまではイメージできるかと思います。

もう少し詳しく見ていきましょう。

まずは、法第2条第6項の条文にある「第11条第1項の委託」について確認していきます。

法第11条第1項は、以下のときは住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないと規定しています。

  1. 一の届出住宅の居室の数が5を超える場合
  2. 人を宿泊させる間、不在(※)等となる場合
    (※)日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除く

つまり、住宅宿泊事業を行う届出住宅のうち、①ひとつの届出住宅の居室の数が5を超える場合(=6室以上)や、②届出住宅が家主不在型の場合は、住宅宿泊管理業者に住宅宿泊管理業務を委託しなければなりません。

次に、同じく法第2条第6項の条文にある「住宅宿泊管理業務」について確認してみましょう。

「住宅宿泊管理業務」とは、法第2条第5項および法第5~10条で規定される以下の業務のことを言います。

  1. 宿泊者の衛生の確保(法第5条)
  2. 宿泊者の安全の確保(法第6条)
  3. 外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保(法第7条)
  4. 宿泊者名簿の備付け等(法第8条)
  5. 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明(法第9条)
  6. 苦情等への対応(法第10条)
  7. 住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全に関する業務(法第2条第5項)

1~6については、法第5条から10条の条文の中に具体的な内容が規定されています。
民泊制度ポータルサイト>「住宅宿泊事業者編」>「住宅宿泊事業者の業務」に各項目について具体的な取り組み内容が紹介されていますので、内容を確認しておくとよいでしょう。

民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業者編」

また、7の「住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全に関する業務」の詳細については、同じく民泊制度ポータルサイト>「管理業務の委託について」>「管理業務の委託」>「住宅宿泊管理業務の委託が必要な場合の考え方とは?」に解説が記載されていますので、併せて確認しておきましょう。

民泊制度ポータルサイト「管理業務の委託について」

以上のことから、法第2条第6項にある「住宅宿泊管理業」とは、以下の事業のことをいいます。

【住宅宿泊管理業】
ひとつの届出住宅の居室の数が6以上または届出住宅が家主不在型の住宅宿泊事業者から委託を受けて、報酬を得て、上記1~7の住宅宿泊管理業務を行う事業

続いて、法第2条第7項の条文にある「第22条第1項の登録」について確認します。

法第22条第1項では住宅宿泊管理業の登録について、以下のように規定しています。

第22条第1項
住宅宿泊管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。

つまり、法第2条第7項の「住宅宿泊管理業者」とは、以下のような事業者のことをいいます。

【住宅宿泊管理業者】
住宅宿泊管理業を営むために必要な国土交通大臣の登録を受けた事業者

住宅宿泊管理業者に必要な要件

先述のとおり、「住宅宿泊管理業者」とは「住宅宿泊管理業を営むために必要な国土交通大臣の登録を受けた事業者」であることから、住宅宿泊管理業を営む為には国土交通大臣の登録を受ける必要があります。

しかし、誰でも事業者登録ができるわけではなく、登録を受けるには「欠格事由に該当しないこと」「財産的基礎を有していること」「必要な体制が整備されていること」の3つの要件をあげています。

それではそれぞれ確認していきましょう。

その1:欠格事由に該当しないこと

申請者が以下にあげるいずれかの項目に該当する場合は、登録を受けることができません(法第25条第1項第1~9号)。

  1. 心身の故障により住宅宿泊管理業を的確に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの(※1)
  2. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  3. 登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(当該登録を取り消された者が法人である場合にあっては、当該取消しの日前30日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。)
  4. 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
  5. 暴力団員等
  6. 住宅宿泊管理業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として国土交通省令で定めるもの(※2)
  7. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号のいずれかに該当するもの
  8. 法人であって、その役員のうちに1から6までのいずれかに該当する者があるもの
  9. 暴力団員等がその事業活動を支配する者

(※1)国土交通省令で定めるものとは、精神の機能の障害により住宅宿泊管理業を的確に遂行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者(住宅宿泊事業法施行規則第6条の2)
(※2)国土交通省令で定めるものとは、次のいずれかに該当する者(住宅宿泊事業法施行規則第7条)
・登録の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から当該処分をする日又は処分をしないことの決定をする日までの間に廃業等の届出(住宅宿泊管理業である法人が合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散したとき又は住宅宿泊管理業を廃止したとき)をした者で当該届出の日から5年を経過しないもの
・上記の期間内に廃業等の届出(住宅宿泊管理業である法人が合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散したとき又は住宅宿泊管理業を廃止したとき)をした法人の役員であった者であって、上記に規定する通知があった日前30日に当たる日から当該法人の合併、解散又は廃止の日までの間にその地位にあったもので当該届出の日から5年を経過しないもの
・住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から3年を経過しない者、又は、禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過しない者

その2:財産的基礎を有していること

住宅宿泊管理業者に登録するためには、住宅宿泊管理業を遂行するために必要と認められる財産的基礎を有していなければいけません。具体的には、以下の基準を満たしていることが求められます。

  1. 負債の合計額が資産の合計額を超えないこと。
  2. 支払不能に陥っていないこと。

2の「支払不能に陥っていないこと」とは、債務者が支払能力の欠乏のため弁済期にある全ての債務について継続的に弁済することができない客観的状態のことをいいます。なお、支払能力の欠乏とは、財産、信用、あるいは労務による収入のいずれをとっても債務を支払う能力がないことを意味します。

その3:必要な体制が整備されていること

住宅宿泊管理業者に登録するためには、「管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制」と「住宅宿泊管理業務を適切に実施するための必要な体制」の2つの体制について、整備されている必要があります。それぞれ確認してみましょう。

管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制

住宅宿泊管理業を行う際には、住宅宿泊事業者との間で、住宅宿泊管理業務についての業務委託契約を締結します。

これらの契約が民法や住宅宿泊事業法などの法令に適合するように締結される為には、こうした契約業務の知識または経験を持つと認められることが必要です。

そこで、申請者には以下のいずれかの要件を満たしていることが求められます。
【個人の場合】

  1. 住宅の取引又は管理に関する契約実務について2年以上の実務経験がある
  2. 宅地建物取引士の登録を受けている
  3. マンション管理業登録を受けている
  4. 賃貸住宅管理業者の登録を受けている
  5. 登録実務講習の修了者(詳細は下欄を参照)

【法人の場合】

  1. 個人の場合の要件を満たすものを従業者として有している
  2. 住宅の取引又は管理に関する契約実務について2年以上の実務経験がある
  3. 宅地建物取引業者の免許を受けている
  4. マンション管理業登録を受けている
  5. 賃貸住宅管理業者の登録を受けている

【登録実務講習とは】
令和5年7月に国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則の一部を改正する省令及び関連告示が公布・施行されました。

この改正により、不動産関連の2年以上の契約実務経験や不動産関連の資格を有さない事業者でも、国土交通大臣の登録を受けた登録実務講習実施機関の行う登録実務講習を受講することで、「管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制」の要件を満たすことができるようになりました。

令和6年11月1日現在、国土交通大臣の登録を受けた登録実務講習機関は、全国に4つあります。
いずれの登録事務講習機関もHP等で受講の申し込みを受け付けていますので、興味のある方は近隣の登録実務講習機関のHPにアクセスしてみてください。

関東エリアの事業者向け:一般社団法人 全国農協観光協会
関西・四国エリアの事業者向け:神戸民泊不動産
北海道エリアの事業者向け:一般社団法人 民泊向上委員会
中国・四国・九州エリアの事業者向け:合同会社 FIRST-PATH (九州・中国地方 住宅宿泊管理業登録実務講習事務局)

住宅宿泊管理業務を適切に実施するための必要な体制について

住宅宿泊管理業務を適切に実施するため以下のような体制を整備する必要があります。

  1. 常時、宿泊者と連絡を取ることが可能な人員体制を備えるなど、苦情等対応における人員体制が確保できている
  2. ICT等を用いて遠隔で業務を行うことを予定している場合には、その具体的な方法が明確になっている
  3. 再委託を予定している場合は、再委託先も含めた人員体制の確保ができている

まとめ

ここまで、住宅宿泊管理業に関する定義や住宅宿泊管理業者登録に必要な要件について解説しましたが、いかがだったでしょうか?

どういった場面で住宅宿泊管理業が必要とされるのかや、住宅宿泊管理業者に必要な資格や実務要件についてもご確認いただければと思います。

特に、登録実務講習機関による登録実務講習が開始されたことで、これまで資格や実務経験がないために登録を見送ってきた事業者についても、登録の道が開かれました。

これにより、例えば田舎の空き家や普段は使用しない別荘などで住宅宿泊事業を行いたい場合、これまでは対応してもらえる住宅宿泊管理事業者がいないため住宅宿泊事業を諦めていたといった方も、自ら住宅宿泊管理業者に登録することで、住宅宿泊事業が行えるといったケースも増えてくるのではないかと思います。

今回は、「住宅宿泊管理業はどうすれば始められる?住宅宿泊管理業を始めるために必要な要件を解説!」というテーマで、住宅宿泊管理業を始めるために必要な基礎知識や登録に必要な要件について解説しました。

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