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旅館業と消防法

(記載:2020年1月22日)

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は「旅館業と消防法」というテーマで、旅館業の許可申請に必要な消防法の内容についてご案内していきます。

この記事は、これから一般の戸建住宅で民泊などの旅館業を始めたいと考えている方に向けて作成しています。
それでは早速見ていきましょう!

消防法とは

消防法は、1948年(昭和23年)に公布された法律です。

消防法第1条には「この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。」とされています。

つまり、消防法では大きく以下の3項目を行うことで、法の目的を達成しようとしています。

(1)火災の予防・警戒・鎮圧により国民の生命・身体・財産を守る
(2)災害による被害を軽減する
(3)災害等による傷病者の搬送を適切に行う

そして、上記の3項目を実行するために、消防法や施行令、施行規則、およびその他の省令等で具体的なルールを定めているということになります。

さて、消防法では、山林・舟車・船渠や埠頭に係留された船舶・建築物などの工作物等を「防火対象物」と言います。
ちなみに消防法による建築物とは、一般にいう建物のことであり、建築基準法で明確に定義される「建築物」よりも広義に解釈されていることにご注意ください。

この防火対象物のうち、百貨店、旅館、病院、地下街、複合用途防火対象物、その他不特定多数の者が出入するものとして政令で定めるものを「特定防火対象物」と言います。
特定防火対象物は、消防設備などの設置基準が一般の防火対象物よりも厳しくなります。

消防法施行令では、建物の使用方法や特性に応じて基準を具体的に設けるため、特定防火対象物を別表第1で用途ごとに20のグループに分類しています。
宿泊施設は、別表第1の(5)項イ「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの(以下、旅館グループという)」と分類されています。

こうして分類された特定防火対象物は、分類ごとにその延べ面積等に応じて、消防設備の設置が義務付けられています。
つまり、これまで特定防火対象物ではなかった一般の戸建住宅を宿泊施設として利用する場合は、延べ床面積当に応じて消防用設備を新たに設置しなければならないことになります。

消防用設備は「消火設備」「警報設備」「避難設備」「消防用水・消火活動上必要な施設」の4つに分類されます。

ここでは、戸建住宅を民泊等の宿泊施設として利用する場合に特に注意が必要となる「消火器(消火設備)」「自動火災報知設備(警報設備)」「誘導灯・誘導標識(避難設備)」について解説します。

消火器の設置基準(消防法施行令第10条1項)

一般の戸建住宅の場合、消火器の設置は義務付けられていませんが、宿泊施設として使用する場合は、特定防火対象物になる為、消火器の設置が必要になります。

消防法施行令第10条1項では、特定防火対象物のうち延べ面積が150㎡以上の旅館グループに該当する建物は消火器の設置を義務付けています。
また、これらの建物のうち、地階・無窓階または3階以上の階が、床面積50㎡以上になるものについても、該当階に消火器を設置するよう定めています。

消火器の設置が必要となる場合は、延べ面積や床面積と消火器の能力から最低限必要な消火器の本数を割りだし、どの場所からも歩行距離20m以下となるように設置しなければなりません。

自動火災報知設備の設置基準(消防法施行令第21条)

自動火災報知機とは、感知器によって火災発生の早期発見などをするために設置される警報装置です。
消防法施行令第21条では、旅館グループに該当する特定防火対象物はもれなく自動火災報知機を設置するよう定めています。

一般の戸建住宅では自動火災報知設備の設置は義務付けられていませんので、宿泊施設として使用する場合は、必ず建物全体に自動火災報知設備を取り付けなければいけません。

ただし、「特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成二十年総務省令第百五十六号)」では、一定の条件を満たす場合は、自動火災報知設備の代わりに特定小規模施設用自動火災報知設備を使用することができるとされています。

特定小規模施設用自動火災報知設備を使用するメリットは、自動火災報知機よりも安価に設置できることです。

自動火災報知設備は、受信機・発信機・中継器・表示灯・地区音響装置・感知器から構成され、機器の価格も高額です。
また、各機器を有線接続するため、配線工事が必要となることや、施工には消防設備士の有資格者が必要なことから、設置費用も高額になりがちです。

一方、特定小規模施設用自動火災報知設備は、受信機・配線不要の無線式感知器です。受信機や配線が不要なため通常の自動火災報知設備に比べて低コストで導入が可能です。また、消防設備士でなくても設置工事ができるというメリットもあります。

さて、特定小規模施設用自動火災報知設備を使用することのできる宿泊施設の条件は、以下の通りです。

・建物の延べ面積が300㎡未満のもの
・建物が、“消防法施行規則第二十三条第四項第七号ヘ”に規定する特定一階段等防火対象物にあたらないこと

特定一階段防火対象物とは、避難階(直接地上へ通ずる出入口のある階のこと)以外の階で、1階及び2階を除く階に特定用途が存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていないものをいいます。

具体的にいうと、例えば出入口が1階にある2階建て(地下階無し)の一般の戸建住宅の全てを宿泊施設として利用する場合、2階は避難階ではありませんが「1階及び2階を除く階」とされていることから、1・2階の全てを特定用途である宿泊施設として使用しても、特定一階段等防火対象物にはあたらないということになります。

一方で、3階建て(出入口1階、地下階無し)の場合で、1階(避難階)に通じる階段が屋内階段1つしかない3階部分を宿泊施設とすると、「避難階以外の階で、1階及び2階を除く階に特定用途が存する防火対象物」ということになり、かつ「当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていないもの」となる為、特定一階段等防火対象物に該当してしまいます。

一般に2階建ての戸建住宅は、延べ面積が200㎡未満であることが多いですから、2階建て以下かつ延べ面積200㎡未満の戸建住宅であれば、自動火災報知設備の設置費用を抑えることができます。

誘導灯・誘導標識の設置基準(消防法施行令第26条)

消防法施行令第26条では、特定防火対象物への誘導灯・誘導標識の設置を義務付けています。

誘導灯と誘導標識とは、火災時に屋外まで安全に避難できるよう経路の目印となるものを言い、誘導灯は「避難口誘導灯」「通路誘導灯」「客席誘導灯」の3つに分類されます。

宿泊施設については、建物の全部において「避難口誘導灯」及び「通路誘導灯」並びに「誘導標識」の設置が義務付けられています。

避難口誘導灯の設置基準

消防法施行規則第28条の3第3項第1号では、避難口誘導灯の具体的な設置基準を以下のように定め、その避難口の上部又はその直近の避難上有効な箇所に避難口誘導灯を設けることを義務付けています。

イ 屋内から直接地上へ通ずる出入口
ロ 直通階段の出入口
ハ イ又はロに掲げる避難口に通ずる廊下又は通路に通ずる出入口
ニ イ又はロに掲げる避難口に通ずる廊下又は通路に設ける防火戸で直接手で開くことができるものがある場所

ただし、ハは条文の後にかっこ書きで(室内の各部分から容易に避難することができるものとして消防庁長官が定める居室の出入口を除く。)として、例外的に設置が免除される居室があることを規定しています。

これを受けて「誘導灯及び誘導標識の基準(平成11年3月17日 消防庁告示第二号)」の第3条第2号では、「規則第二十八条の三第三項第一号ハの消防庁長官が定める居室は、室内の各部分から当該居室の出入口を容易に見とおし、かつ、識別することができるもので、床面積が百平方メートル(主として防火対象物の関係者及び関係者に雇用されている者の使用に供するものにあっては、四百平方メートル)以下であるものとする。」と定めています。

これをわかりやすくまとめると、以下の2つが全て該当する居室については、避難誘導等の設置が免除されることになります。

(1)室内の各部分から当該居室の出入口を容易に見とおし、かつ、識別することができる
(2)床面積が100㎡(主として防火対象物の関係者及び関係者に雇用されている者の使用に供するものにあっては、400㎡)以下である

避難口誘導灯には、表示面の大きさや明るさによりA~C級の3つに区分され、その有効範囲も決まっているので、居室や通路の大きさにあわせて適切なものを選択しなければなりません。

通路誘導灯の設置基準

消防法施行規則第28条の3第3項第2号には、通路誘導灯の設置基準を以下のように定めています。

イ 廊下または通路の曲り角
ロ 前号イ及びロに掲げる避難口に設置される避難口誘導灯の有効範囲内の箇所
ハ イ及びロのほか、廊下又は通路の各部分(避難口誘導灯の有効範囲内の部分を除く。)を通路誘導灯の有効範囲内に包含するために必要な箇所

ただし、消防法施行令第28条の2第2項第1号では、「居室の各部分から主要な避難口又はこれに設ける避難口誘導灯を容易に見とおし、かつ、識別することができる階で、当該避難口に至る歩行距離が避難階にあつては四十メートル以下、避難階以外の階にあつては三十メートル以下であるもの」については、避難が容易であると認められるものとして、通路誘導灯の設置を免除しています。

これをわかりやすくまとめると、以下の2つが全て該当する通路については、通路誘導灯の設置が免除されます。

(1)当該階が居室の各部分から主要な避難口又はこれに設ける避難口誘導灯を容易に見とおし、かつ、識別することができる
(2)当該避難口に至る歩行距離が避難階にあっては40m以下、避難階以外の階にあっては30m以下である

通路誘導灯も、表示面の大きさや明るさによりA~C級の3つに区分され、その有効範囲も決まっています。

誘導標識の設置基準

消防法施行規則第28条の3第5項には、通路標識の設置基準を以下のように定めています。

一 避難口又は階段に設けるものを除き、各階ごとに、その廊下及び通路の各部分から一の誘導標識までの歩行距離が7.5m以下となる箇所及び曲り角に設けること。
二 多数の者の目に触れやすく、かつ、採光が識別上十分である箇所に設けること。
三 誘導標識の周囲には、誘導標識とまぎらわしい又は誘導標識をさえぎる広告物、掲示物等を設けないこと。

ただし、消防法施行令第26条第3項には、「(避難口および通路)誘導灯の有効範囲内の部分について誘導標識を設置しないことができる。」とされており、誘導灯を設置した場合は、その有効範囲には誘導標識の設置は不要とされています。

まとめ

ここまで、旅館業許可申請を行うにあたって理解しておきたい消防法の内容を確認してみましたが、いかがでしたか?

今回は一般の戸建住宅を宿泊施設として利用する際に、特に必要となる消防法の知識を確認しましたが、消防法には今回解説した内容以外にも様々な規定があります。

ですから、自動火災報知設備や消火器、誘導灯、誘導標識の設置にあたっては、ご自身で判断せず、必ず管轄の消防署に確認を取るようにしてください。

以上、「旅館業と消防法」というテーマで、旅館業の許可申請に必要な消防法の内容についてご案内しました。

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