最新記事

ホテル・旅館事業部を分社化する際に必要な手続き【期間・費用も解説】

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は、ホテル・旅館事業部を分社化する際に必要な手続きについて、詳しく解説していきます。

ホテル・旅館事業を取り扱う事業部を会社分割する場合、こんな疑問が出てきます。

  • 会社分割する際に、旅館業の許可やその他の許認可は、承継できるのだろうか?
  • いつから手続きを始めたらよいのか、わからない
  • 手続きにどれくらいの費用がかかるのか、わからない

こうした疑問について、旅行業・旅館業専門の行政書士が、法律の根拠を示しながら解説します。
それでは早速見ていきましょう!

ホテル・旅館部門を分社化する際に必要な手続き

ホテル・旅館を始める際に取得した許認可は、承継の手続きが必要なものもあります。
主なものは、以下の通りです。

  • 旅館業法関連
  • 水質汚濁防止法関連
  • 消防法令関係

分社化する場合、これらの許認可に対して、どのような手続きが必要になるのかを、確認していきましょう。

旅館業法関連

まずは旅館業法関連です。

旅館業を行うには旅館業の許可が必要です。ですから、分社後の会社が引き続き旅館業を行うには、分社後の会社に旅館業の許可が必要となります。しかし、今ある許可を分社後の会社に引き継げるかどうかは、分社化の方法によって異なります。

分社化の方法には、新設分割吸収分割のふたつの方法があります。それぞれの場合の旅館業許可の取扱い方について見て行きましょう。

新設分割の場合

新設分割とは、法人が営んでいる事業の一部を子会社化する、他の会社に移管するなどの方法で会社分割をする手法です。
今回の事例でいうと、ホテル・旅館事業を行っている事業部をそのまま子会社化するような場合は、新設分割になります。

新設分割の場合、旅館業許可は旅館業法第3条の2第1項に規定により、都道府県知事の承認を受けることで、許可を承継することができます。

旅館業法第3条の2(第1項)
前条第一項の許可を受けて旅館業を営む者(以下「営業者」という。)たる法人の合併の場合(営業者たる法人と営業者でない法人が合併して営業者たる法人が存続する場合を除く。)又は分割の場合(当該旅館業を承継させる場合に限る。)において当該合併又は分割について都道府県知事の承認を受けたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該旅館業を承継した法人は、営業者の地位を承継する。
(第2項)
以下略

都道府県知事の承認を受けるには、旅館業法施行規則第2条第1項に規定された申請書と第2項に規定された書類を提出しなければなりません。

旅館業法施行規則第2条(第1項)
法第三条の二第一項の規定により承認を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を、その営業施設所在地を管轄する都道府県知事に提出しなければならない。
一 合併により消滅する法人又は分割前の法人及び合併後存続する法人若しくは合併により設立される法人又は分割により旅館業を承継する法人の名称、事務所所在地及び代表者の氏名
二 合併又は分割の予定年月日
三 営業施設の名称及び所在地
四 法第三条第二項各号に該当することの有無及び該当するときは、その内容
(第2項)
前項の申請書には、合併後存続する法人若しくは合併により設立される法人又は分割により旅館業を承継する法人の定款又は寄附行為の写しを添付しなければならない。

申請書は、各自治体ごとに条例や細則等で様式を定めています。また、自治体によっては、これらの条例や細則等で別途添付書類を定めている場合もあります。

実務上では、新設分割前に各自治体が定める申請書(旅館業営業承継承認申請)を提出して、新設分割後に旅館業を承継した会社の定款または寄付行為の写しを提出します。

吸収分割の場合

吸収分割とは、事業を他社に移転して対価として分割先会社の株式や現金を受け取るなどの方法で会社分割をする手法です。
今回の事例でいうと、事前に新会社を設立しておいて、その後にホテル・旅館事業を行っている事業部を新会社に移管するような場合は、吸収分割になります。

この場合ですと、既に存在している別会社に事業を移管することになるので、旅館業法第3条の2第1項に規定される承継手続きは適用されません。

その為、吸収分割を行う場合は、事業を移管される新会社が、新規の旅館業許可申請を行い、許可取得後に、事業を移管した会社が廃業届を提出する、という手続きが必要になります。

水質汚濁防止法

次に水質汚濁防止法関連です。
水質汚濁防止法に基づく届出を行った会社が分社化によって、その事業を移管する場合は、水質汚濁防止法第11条に規定する通り、その施設を承継した者がその地位を承継します。これは新設分割、吸収分割のどちらの場合も変わりません。

水質汚濁防止法第十一条(第1項)
第五条又は第六条第一項若しくは第二項の規定による届出をした者からその届出に係る特定施設又は有害物質貯蔵指定施設を譲り受け、又は借り受けた者は、当該特定施設又は有害物質貯蔵指定施設に係る当該届出をした者の地位を承継する。
(第2項)
第五条又は第六条第一項若しくは第二項の規定による届出をした者について相続、合併又は分割(その届出に係る特定施設又は有害物質貯蔵指定施設を承継させるものに限る。)があつたときは、相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該特定施設若しくは有害物質貯蔵指定施設を承継した法人は、当該届出をした者の地位を承継する。
(第3項)
前二項の規定により第五条又は第六条第一項若しくは第二項の規定による届出をした者の地位を承継した者は、その承継があつた日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(第4項)
以下略

届出に必要な様式については、水質汚濁防止法施行規則第8条に規定される様式を使用します。

水質汚濁防止法施行規則第八条法第十一条第三項の規定による届出は、様式第七による届出書によつてしなければならない。

実務上では、事業を承継した会社が、水質汚濁防止法施行規則に定める様式(承継届出書)を承継のあった日から30日以内に、都道府県知事に提出します。

消防法令関係

続いて、消防法令関係です。
ホテル・旅館事業の分社化に伴い必要となる消防法に関する主な手続きは、防火管理者選任届防火対象物点検報告特例認定に伴う、管理権限者変更の届出があります。

防火管理者選任届

消防法第8条と消防法施行令第1条の2では、収容人数が30人以上のホテルや旅館等については、管理の権原を有する者が防火管理者を定めて、その旨を管轄の消防署に届け出ることとされています。

消防法第8条(第1項)
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
(第2項)
前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
(第3項)
以下略
消防法施行令第1条の2第3項第1号ロ(第3項)
法第八条第一項の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。
(第1号 ロ)
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物(同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(六)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものを除く。)で、収容人員が三十人以上のもの
※別表第一の(五)項イが、「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」とされています。

分社化により、新会社にホテル・旅館事業が承継されると、防火管理権原者が変わるため、改めて防火管理者を選任し、管轄の消防署へ届出なければいけません。もちろん選任される防火管理者が、結果としてそれまでの防火管理者と同じ者であっても構いません。

届出には、消防法施行規則第3条の2に規定する様式と添付書類が必要です。

消防法施行規則第3条の2(第1項)
法第八条第二項の規定による防火管理者の選任又は解任の届出は、別記様式第一号の二の二による届出書によつてしなければならない。
(第2項)
前項の届出書には、選任の届出にあつては、防火管理者の資格を証する書面を添えなければならない。

実務上では、事業を承継した会社が、消防法施行規則第3条の2にある届出書(防火防災管理者選任(解任)届出書)に、選任した防火管理者の防火・防災管理講習の修了証を添付して、承継後に提出します。

防火対象物点検報告特例認定に伴う、管理権限者変更の届出

もし、分社化するホテル・旅館が、防火対象物点検報告特例認定を受けている場合は、管理権原者変更届を管轄の消防署へ届け出なければいけません。

消防法第8条の2の3(第5項)
第一項の規定による認定を受けた防火対象物について、当該防火対象物の管理について権原を有する者に変更があつたときは、当該変更前の権原を有する者は、総務省令で定めるところにより、その旨を消防長又は消防署長に届け出なければならない。

届出には、消防法施行規則第4条の2の8第7項に規定する様式で行います。

消防法施行規則第4条の2の8(第7項)
法第八条の二の三第五項の規定による届出は、別記様式第一号の二の二の三により行うものとする。

実務上では、事業を承継した会社が、消防法施行規則第4条の2の8にある届出書(管理権原者変更届出書)を、承継後に提出します。なお、管理権原者が変わるため、特例認定は失効します(消防法第8条の2の3第4項第2号)。

手続きに必要な期間

ここで問題になってくるのが、旅館業の許可に関する手続きです。
何故なら、他の手続きは承継後に行えばよいのですが、旅館業の許可に関する手続きは承継前に行う必要があるからです。
新設分割か吸収分割かによって、必要な手続きは変わりますが、それぞれに必要な期間は以下のようになります。

【新設分割の場合】
→旅館業営業承継承認申請:2週間~1ヶ月前の提出(期間は自治体による)

【吸収分割の場合】
→旅館業許可申請(新規):申請~許可までに10日~2週間程度だが、それまでに事前相談や消防設備・建築確認など関係各所への調整が必要

特に新規で旅館業許可申請を行う場合、前回の資料をそのまま流用できる場合もありますが、追加で必要になる場合も多々あります。また、以前の許可申請時と状況が変わり、旅館業の営業ができない場所になっていることもありますので、事前にしっかりと調べておく必要があります。

手続きに必要な費用

旅館業法の手続きには手数料がかかります。自治体にもよりますが、旅館業許可申請であれば2万円前後、旅館業営業承継承認申請であれば1万円前後の手数料が必要になります。
その他の手続には手数料はかかりません。

なお、これらの手続きを専門家に依頼するのであれば、別途報酬が必要となります。目安として、旅館業法の手続きが新規申請であれば30万円前後、承継承認申請であれば10万円前後です。ただし、あくまでも目安ですので、詳細が知りたい場合は、専門家に見積を依頼することをお勧めします。

まとめ

自社のホテル・旅館事業部を分社化する場合に必要な手続きや、手続きに必要な期間・費用について理解いただけたかと思います。もし、分社化ではなく、M&Aなどの事業承継について知りたい場合は「ホテル・旅館がM&Aなどの事業承継する際に必要な旅館業法の手続きを解説」をご覧ください。

以上、ホテル・旅館事業部を分社化する際に必要な手続きについて、解説しました。

関連記事

お勧めサービス

民泊物件簡易診断サービス

書類作成代行サービス

旅のコラム(最新記事)

記事一覧

ページ上部へ戻る