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旅行業に該当する行為とは?旅行業登録が必要かどうかを解説します。

(記載:2023年4月8日)

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は「旅行業に該当する行為とは?旅行業登録が必要かどうかを解説します。」というテーマで、あなたが始めようとしている事業に旅行業登録が必要かどうかをわかりやすく解説していきます。
記事の最後に、旅行業登録が必要かどうかを判断するためのチェック表もありますので、是非最後までお読みください。

それでは早速見ていきましょう!

旅行業法における旅行業の定義

まず、どういった行為が旅行業に該当するのかを確認しましょう。
旅行業のルールである旅行業法では、旅行業を以下のように定義しています。

第2条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業をいう。

つまり、あなたが行おうとしている(もしくは、すでに行っている)行為が、

  1. 報酬を得ている
  2. 法第2条第1項に掲げる行為を行う
  3. 事業として行う

という3つの要件の全てが該当する場合、その行為は旅行業であるということになります。

そして、以下のように旅行業を行うものは、必ず事前に旅行業登録を行わなければならないとされています。

第3条 旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない

ところで、旅行業登録が必要な場合とは、行おうとする行為が前出の法第2条の3つの要件を全て備えている場合です。逆に言えば、3つの要件のどれかひとつでも欠けていれば、その行為は旅行業には該当しませんので、旅行業登録は必要ないということになります。

そこで、旅行業に該当する行為かどうかを判断するために、「報酬を得ている」「法第2条第1項に掲げる行為を行う」「事業として行う」という3つの要件について、詳しく解説していきましょう。

「法第2条第1項に掲げる行為」とは?

順を追って理解いて頂くために、最初に「旅行業法第2条第1項に掲げる行為」の内容について解説します。

旅行業法第2条第1項には、旅行業に該当する行為として、以下の9つ行為を挙げています。

  1. 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
  2. 前号に掲げる行為に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービス(以下「運送等関連サービス」という。)を旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等関連サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等関連サービスを提供する者との間で締結する行為
  3. 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
  4. 運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
  5. 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為
  6. 前三号に掲げる行為に付随して、旅行者のため、運送等関連サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
  7. 第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、運送等関連サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等関連サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
  8. 第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
  9. 旅行に関する相談に応ずる行為

これらを要約すると、以下のようになります。

  1. 自己の計算において(=利益を得るために)、旅行プランを作成して、その旅行プランに必要な運送手段や宿泊先(=運送等サービス)を旅行者を代理して契約する行為
  2. 1の旅行プランに付随する運送手段や宿泊以外のサービス(運送等関連サービス)について、旅行者を代理して運送や宿泊先を契約する行為
  3. 旅行者を代理して、運送等サービスの契約を締結したり、媒介、取次ぎをする行為
  4. 運送業者や宿泊業者を代理して、旅行者と契約を締結したり、媒介、取次ぎをする行為
  5. 旅行者のために、運送手段をチャーターしたり、宿泊施設を確保する行為
  6. 3に付随する運送手段や宿泊先以外のサービスを旅行者が受けるために、旅行者を代理して契約を締結したり、媒介、取次ぎをする行為
  7. 3~5に付随する運送手段や宿泊先以外のサービスを旅行者に提供することについて、運送業者や宿泊業者を代理して、旅行者と契約を締結したり、媒介、取次ぎをする行為
  8. 1~3や5に付随する旅券(パスポート)の受給手続きや査証(ビザ)の発給申請手続などの行為
  9. 旅行に関する相談に応じる行為

1~9を眺めてみると、旅行業に該当する行為とは、「運送又は宿泊のサービス、これに付随するその他のサービスについて、旅行者と運送・宿泊業者の間で、どちらか一方の代理として、その相手方と契約したり、媒介、取次ぎをすること」と「旅行に関する相談を受けること」ということになります。

運送等サービスと運送等関連サービス

次に、「運送又は宿泊のサービス(=運送等サービス)」と「これに付随するその他のサービス(運送等関連サービス)」について、もう少し詳しく解説します。

国のガイドラインである旅行業法施行要領では、「運送等サービス」と「運送等関連サービス」について、以下のように記述しています。

法では旅行業務について、基本的旅行業務(運送又は宿泊についての業務)と付随的旅行業務(運送又は宿泊以外のサービスについての業務)とに区分し、後者は前者に付随して行う場合に限り旅行業務となるとしている。したがって、以下の場合には、旅行業に該当しない。
(例)

    1. 運送事業者が自ら行う日帰り旅行、宿泊事業者自らが行うゴルフや果樹園との提携企画等運送又は宿泊サービスを自ら提供し(代理、媒介、取次ぎ、利用のいずれにも該当せず、したがって基本的旅行業務とならない。)これに運送、宿泊以外のサービスの手配を付加して販売する場合
    2. 運送又は宿泊以外のサービス(付随的旅行業務)についてのみ手配し、又は旅行者に提供する場合(プレイガイド、ガイド等)

ここに出てくる「旅行業務」とは、法第2条第1項に掲げる行為のことです(法第2条第4項)。旅行業法施行要領では、「運送又は宿泊以外のサービスについては、運送又は宿泊サービスに付随して行う場合に限り旅行業務になる」としています。

つまり、取り扱う業務が「運送又は宿泊を伴わず、その他のサービスのみを単独で取り扱う」のであれば、旅行業務には該当しません。

具体例を挙げると、例えば現地集合の現地解散で行う日帰りのトレッキングガイドは、運送や宿泊を伴わないその他のサービスのみを提供していますので、旅行業務には該当しないということになります。

「法第2条第1項に掲げる行為」のまとめ

以上から、「旅行業法第2条第1項に掲げる行為(=旅行業務)」に該当する行為とは、以下のようなものになります。

旅行業に該当する行為

 旅行者と運送宿泊業者との間で、どちらか一方の代理として、その相手方と契約したり・媒介、取次ぎをする以下の行為
 ・運送または宿泊に関すること
 ・運送または宿泊に付随するその他のサービスに関すること
 ・運送または宿泊およびこれらに付随するその他のサービスについて相談を受けること

一方で、以下ような行為であれば、旅行業登録は必要ありません。

旅行業務に該当しない行為

 旅行者と運送・宿泊業者の間で、どちらか一方の代理として、その相手方と契約したり、媒介、取次ぎをする以下の行為
 ・運送又は宿泊が付随しないその他のサービスに関すること
 ・運送又は宿泊が付随しないその他のサービスについての相談を受けること

「報酬を得ている」とは?

次に「報酬を得ている」とは、どういった状態をいうのかを解説します。

「報酬」について、旅行業法施行要領の中で、以下のように記載されてります。

  1. 事業者が法第2条第1項各号に掲げる行為を行うことによって、経済的収入を得ていれば報酬となる。
  2. 旅行者からの金員の徴収がない場合や、行為と収入との間には直接的な対価関係がない場合でも、以下に示すような相当の関係があれば、報酬を得ていると認められる。
    1. 旅行者の依頼により無料で宿を手配したが、後にこれによる割戻し(いわゆるキックバック等)を旅館から受けている場合
    2. 留学あっせん事業において、留学あっせんと運送又は宿泊のサービスに係る対価を包括して徴収している等、旅行業以外のサービスに係る対価を支払う契約の相手方に対し、不可分一体のものとして運送又は宿泊のサービスを手配している場合
  3. 企画旅行のように包括料金で取引されるもので、収支の内訳が明確でなく、法第2条第1項各号に掲げる行為を行うことにより得た経済的収入によって支出を償うことができていないことが明らかでない場合は、旅行業務に関し取引をする者から得た報酬により利益が出ているものとみなされる。

ポイントは1項目目にある「経済的収入」です。旅行業法でいう「報酬」とは「経済的収入」のことをいうのだと、ここでは述べられています。

経済的な収入ですから、金銭を受領していれば、これは報酬を得ているということになります。つまり、旅行業法でいう報酬とは、旅行業務を行うことで旅行者から受け取る金銭のことを言います。

具体的にいうと、例えば旅行者の代わりにホテルや旅館を予約する場合に、かかった宿泊費を受領すれば、その受け取る金額に利益が含まれていなくても、旅行業務を行うことで金銭を受け取っているので、この受け取る金銭は「報酬」に該当します。

一般的な感覚だと「報酬」とは「利益」や「収益」が出ているという意味合いに捉えがちですが、旅行業法では、旅行業務を行うことで金銭を受け取れば、例え利益が出ていなくても、その金銭は「報酬」なのです。

それでは、旅行者の代わりに旅行業務を行ったとして、旅行者からは金銭を受け取らず、運送事業者や宿泊事業者から「紹介料」や「キックバック」であればどうでしょう?

これも2項目目にあるように直接的な対価関係に無くても、相当の関係があれば報酬を得ていると認められるとされ、この場合も報酬を受け取っていると判断されます。

また、3項目目にあるように、包括的に受け取る金銭の中に旅行業務を行うことで支出する費用が含まれていない(=受け取る金銭の一部で旅行業務に該当する行為の費用を賄っている)ことが明らかでない場合も、報酬を受け取っているとみなされます。

「報酬を得ている」のまとめ

以上から、旅行業法における「報酬を得ている」と判断される行為をまとめると、以下のようになります。

報酬に該当する場合

 ・旅行者から金銭を受領している。
 ・旅行者を紹介することで、運送・宿泊サービス事業者からキックバックを得ている。
 ・旅行者から受け取る費用の中に旅行業務に該当する費用が含まれている。

「事業として行う」とは?

最後に「事業として行う」とは、どういった状態をいうのかを解説します。

旅行業法上の事業に該当するかどうかはどう判断するのかについては、「旅行業法施行要領の一部改正(平成30年7月改正)に関する参考資料」の中で、以下のように記されています。

個別の事例ごとに「営利性」「募集の不特定多数性」「反復継続性」の3つの要件を総合的に勘案し、当該事例が「事業」として成立するかどうかを判断する。

”個別の事例ごとに(中略)総合的に勘案し(後略)”とありますので、この3つの要素が全て揃っていれば自動的に事業と判断されるとか、逆に2つしか該当しないから事業ではないと言い切れるものではないのですが、とはいえ「営利性」「募集の不特定多数性」「反復継続性」という3つの要素がポイントになることは間違いなさそうです。

それでは、これらをもう少し詳しく見て行きましょう。

営利性

営利性がある場合とは、旅行業務を行うことで利益が上がることを言います。また、旅行業務で利益を得ていなくても、旅行業務と付随して行われるサービスで利益が出ていれば、全体として営利性があると判断される可能性が高いです。

一方で、旅行業務と一体として行われるが、仮に旅行業務が無くても同額でサービスが受けられる(つまり、旅行業務は無料で提供されている)といった場合には、営利性は低いと考えられます。例えば、ホテルが行う無料送迎バスなどは、これにあたります。

募集の不特定多数性

募集の不特定多数性は、募集の範囲をどこまで設定しているかによって判断されます。

例えば、会社の社員旅行では、その募集の範囲は社員に限定されます。この場合だと、募集の範囲は特定されますから、不特定多数性は限りなく低いと考えられます。

一方で、日本国内の企業の管理者層を対象としたマネジメント研修合宿であれば、その募集の範囲は日本国内の様々な企業の管理職ということになりますから、不特定多数性はかなり高いと言えるでしょう。

反復継続性

反復継続性があるとは、一回のみの実施ではなく、継続の意思を持って行うことを言います。

反復継続する意思があると認められる場合として、旅行業法施行要領では、以下のような事例を挙げています。

・旅行の手配を行う旨の宣伝、広告が日常的に行われている場合
・店を構え、旅行業務を行う旨看板を掲げている場合

「事業として行っている」のまとめ

以上から、旅行業法における「事業として行っている」と判断される行為をまとめると、以下のようになります。

事業として行っていると認められる場合

 ・旅行業務を行うことで、結果として利益を得ている
 ・エリアやコミュニティーなどを限定することなく、不特定多数の消費者を対象としている
 ・旅行業務を繰り返し行う意思が認められる(一回限りではない)

「旅行業に該当するか?」が簡単に判断できる6つのチェック項目

旅行業に該当するかどうかは「総合的な判断を要する(旅行業施行要領)」とされていますので、一概に「これをすれば旅行業である」とは言えません。とはいえ、これまでのご案内の通り、その行為が旅行業登録の必要な行為なのかを判断するための目安はあります。

そこで、あなたの始めようとする事業が旅行業に該当するかどうかを判断するために、その目安を表にまとめてみました。

要件 項目
①行業法第2条第1項に該当する行為について □旅行者の代わりに「電車や船舶、飛行機などの予約・チケットの手配」「バスやタクシーなどのチャーター」を行う
□旅行者の代わりに「ホテルや旅館などの宿泊先の予約や手配」を行う
②報酬について □①を行うことで、旅行者から金銭を受け取る
□①を行うことで、運送・宿泊業者からキックバックを受け取る
③事業性について □①と合わせて行う行為について、不特定多数を対象として募集を行う
□①と合わせて行う行為について、複数回もしくは繰り返し行う(1度きりではない)

ご覧の通り、左側に旅行業の要件を記載しています。ひとつの要件に対して、右側に2つの項目を設けています。項目にひとつでもチェックが付いたら、その要件は該当していると判断します。

あなたの始めようとしている事業は、要件がいくつ該当したでしょうか?

該当している要件が0~2つの場合

該当してる要件が0~2つだった場合、その事業は旅行業に該当していないと思われます。とはいえ、勝手に判断を進めて、あとで旅行業に該当していたといことになっても困りますよね。

ですので、こういった方は、各都道府県の担当課に直接問い合わせてみるのが良いのではないでしょうか?「役所は怖い」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、今はどこの窓口も大変親切ですし、丁寧に対応してもらえます。

このブログの記事に内容も踏まえて、担当課の方に説明して頂ければ、間違いない回答を頂けますし、何より担当課の方に「旅行業に該当しない」と回答してもらえれば、その後も安心して事業を進めていけるのではないでしょうか?

該当している要件が3つの場合

3つの要件が全て該当する場合、その事業は旅行業に該当している可能が高いと思われます。ですので、旅行業登録を行うことも視野に入れて、事業を検討していくのが良いと思います。

旅行業登録は、取り扱う旅行商品の種類やその範囲に応じて、いくつか区分がありますし、区分ごとに必要な要件も違います。

もし、あなたのお知り合いに旅行業登録に詳しい専門家がいるのであれば、今後の進め方について相談することをお勧めします。きっと、良いアドバイスを頂けると思います。周りにそういった方がいないのであれば、ネットなどで旅行業登録を専門で扱っている行政書士を探して、相談してみると良いでしょう。

ちなみに、弊所も旅行業登録を専門で扱う行政書士事務所です。弊所では、初回に限り30分無料で相談を受け付けています。ご興味のある方は、お問合せフォームよりお申込みください。お申し込みの際に、コメント欄に「30分の無料相談を受けたい」と記入して下さい。

また、旅行業登録について、制度の概要や登録に必要な費用について知りたいという方は、以下の記事もご覧になってください。

旅行業登録を行う前に知っておきたい基礎知識

旅行業登録には、いくら資金が必要なのか?最低限必要な費用を登録種別ごとにご案内します。

まとめ

ここまで、旅行業法における旅行業の要件について確認しましたが、いかがだったでしょうか?

旅行業に該当する行為や報酬の概念など、一般的な感覚と法律上の定義との違いについてもご理解いただけたのではないかと思います。

また、最後にご案内した旅行業に該当するかどうかのチェック表は、ご自身の事業が旅行業に該当しているかの目安になりますので、是非ご活用ください。

今回は「旅行業に該当する行為とは?旅行業登録が必要かどうかを解説します。」というテーマで、旅行業の定義やチェックポイントについて詳しく解説しました。

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