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11.92019
グランピングサイトを始めるときに知っておきたい12の法律
(記載:2019年11月9日)
行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は、「グランピングサイトを始めるときに知っておきたい12の法律」というテーマで、宿泊事業を始める前に必要な法律についてご案内します。
この記事は、グランピングサイトの開設を検討されている方はもちろんのこと、民泊等の開業を検討されている方にも読んでいただきたい内容となっています。
それでは早速見ていきましょう!
<目 次>
旅館業法(簡易宿所)
グランピングサイトを開設する場合は、旅館業法の簡易宿所営業の許可が必要となる場合があります。
経産省の見解では、「参加者にテント等を貸与提供し、アウトドアレジャー体験の対価として料金を徴収することは、旅館業法第 2 条に規定する『施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業』に当たらず、旅館業法の適用を受けない」されています。
つまり、事業者がテント等を貸し出して、参加者が自ら設置して、使用後に片づけて返却するのであれば、旅館業法の適用対象外です。
一方で、ケビンやバンガロー・常設テントは、施設を設けていることになるので、旅館業法が適用されます。
旅館業法の許可基準としては、以下のようなものがあげられます。
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- 客室床面積:延床面積33㎡以上(宿泊者数を10人未満とする場合は、3.3㎡に宿泊者数の数を乗じて得た面積以上)。
- フロントの設置:規制はないが、各自治体が条例で規制している場合もあり。
- お風呂:必要。ただし、近接する公衆浴場などで代替することも可能。
- トイレ・洗面設備:宿泊者数に応じた適当な数のトイレや適当な規模の洗面設備が必要。
- その他設備:適当な換気・採光・照明・防湿および排水の設備が必要。
その他、申請者の人的要件や周辺の施設要件を満たすこと、都道府県が条例等で定める構造設備の基準に適合すること等が求められます。
都市計画法
都市計画法では、都市計画区域内のうち、市街化調整区域内と市街化区域の一部の区域について、ホテル・旅館施設の建設が禁止されています。
また、準都市計画区域においても規制されている場合があるので注意が必要です。
準都市計画区域とは、現在は積極的な整備または開発を行う必要はないものの、無秩序な開発行為を許すと、将来において都市開発をおこなう際に総合的な整備、開発および保全に支障が生じるおそれがある区域を指定したものです。
具体的には、郊外の高速道路の出口周辺のエリアなどが指定されていることが多いです。
「高速道路の出口に近い山林や川辺で、まさか都市計画区域ではないだろうと考えていたら、実は準都市開発区域でサイトの建設ができない区域だった」ということもありえますので、注意が必要です。
建築基準法
建築基準法では、ホテル等の特殊建築物で、その用途に使用する延床面積が200㎡以上の建築物については、建築確認申請が必要になります。
ただし、常設テントの場合、自治体によって見解が異なり、建築確認を必要とする自治体もあれば、不要な自治体もあります。
消防法
簡易宿所営業の場合、防火管理者の設置と消防計画の作成が必要となります。
宿泊施設の延床面積が150㎡を超える場合は消火器を備えなければなりませんし、自動火災報知器も必要です。
水道法
井戸や湧き水など水道水以外の自家水源を利用する場合、水道法の規制はかかりません。
ただし、自治体によっては条例等で「保健所への確認申請」「定期的な水質検査の受診」「水の消毒」など規制を設けている場合もあります。
また、条例等の無い自治体も井戸水や湧き水の利用について指導等を行っていますので、自家水源を利用する際は、各自治体への確認が必要です。
公衆浴場法
お風呂(浴槽のあるもの)を設ける場合は、公衆浴場法の対象となる場合があります。
対象となるのは、簡易宿所営業の許可を取らず、テントの貸し出しなどで営業している場合です。
具体的な基準は各都道府県が定める公衆浴場法施行条例で規定されています。
ちなみに、簡易宿所営業の場合は、旅館業法にお風呂の設置規定があります。
それぞれの基準を比較すると、公衆浴場法では脱衣所・浴室を男女別にすることとされていますが、旅館業法では男女別は不要です。
また、トイレについても公衆浴場法では併設することとされていますが、旅館業法では不要です。
温泉法
もし、サイト内に温泉風呂を設ける場合は、都道府県知事又は保健所設置市(区)長の許可が必要となります。
許可を得て施設を設けた場合は、登録分析機関の行う温泉成分分析の結果に基づき、温泉の成分・禁忌症等を掲示しなければなりません。
なお、温泉の採掘・採取には、別途都道府県知事の許可が必要です。
食品衛生法
BBQ用の肉などの食料品を販売する場合は、都道府県知事の販売許可が必要です。
酒税法
酒類の販売を行う場合は、酒類小売業免許が必要です。
免許申請は、販売所の所在地の所轄税務署長に対しておこないます。
農地法
サイトを開発しようとする土地が農地だった場合、農地転用が必要です。
現況が荒れ地や山林であっても、登記を調べてみると地目が「田」「畑」だったということは、意外とよくあります。
また、農業振興地域に入っている場合は、農振除外申請も必要です。
国土利用計画法
サイトを開発するための土地を購入する場合、取引面積が①市街化区域:2,000㎡以上、②市街化区域を除く都市計画区域:5,000㎡以上、③それ以外の区域:1万㎡以上、になると都道府県知事への届け出が必要になります。
森林法
サイトを開発するために森林を伐採する場合、そこが都道府県知事が立てた地域森林計画の対象となる民有林で、土石の採掘や林地以外への転用などの土地の形質の変更を行うことによって10,000㎡を超える開発行為を行う場合、都道府県知事の林地開発許可が必要です。
なお、伐採する面積が10,000㎡以下の場合も、伐採及び伐採後の造林届出書(いわゆる伐採届)を市町村長に届け出なければいけません。
現状、国有林と保安林以外の森林はほとんどが地域森林計画の対象となっています。
まとめ
ここまで、グランピングサイトの開設に関わる法律を簡単に確認してみましたが、いかがでしたか?
グランピングサイトだけでなく民泊事業の開業を検討されている方にも参考になったのではないでしょうか?
今回は主だった12の法律を解説しましたが、場所や地域、提供するサービスによって、他の法律や条例の対象となる場合もあります。
例えば、事業を検討してる場所が、国立・国定公園内や自然公園内であった場合は、自然公園法に基づく手続きが必要です。
法令・条例に違反した場合には罰則が課される場合もありますので、事業を開始する際に行う様々な行為に対して、それぞれに法的根拠を確認することが大切です。
以上、「グランピングサイトを始めるときに知っておきたい12の法律」というテーマで、宿泊事業を始める前に必要な法律についてご案内しました。