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旅館業と建築基準法(前編)

(記載:2019年11月25日)

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は「旅館業と建築基準法(前編)」というテーマで、旅館業の許可申請に必要な建築基準法の知識を確認していきます。

この記事は、これから一般の戸建住宅で民泊などの旅館業を始めたいと考えている方に向けて作成しています。
それでは早速見ていきましょう!

建築基準法とは

建築基準法とは、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めた法律です。

建築基準法では、「不特定多数の集まる施設」「宿泊や就寝を伴う施設」「出荷の危険が大きい施設」など、特殊な用途の建築物のことを特殊建築物として、通常の建築物(一般建築物)と区分して、別途建築基準を設けています。

戸建住宅を民泊施設として利用する場合、旅館業法の簡易宿所営業の許可を受けて事業を始めることが多いですが、この簡易宿所は特殊建築物の「ホテル等」に当たります。

一般建築物から特殊建築物変わると適用される建築基準も変わりますので、戸建住宅として使用している際には求められなかった厳しい建築基準への適合が求められることになります。

用途地域の確認

建築基準法では、都市計画法で指定された市街化区域内を、以下の12種類の用途地域に区分けして、その地域に建築できる建築物を制限しています。

  1. 第1種低層住居専用地域
  2. 第2種低層住居専用地域
  3. 第1種中高層住居専用地域
  4. 第2種中高層住居専用地域
  5. 第1種住居地域
  6. 第2種重軽地域
  7. 準住居地域
  8. 近隣商業地域
  9. 商業地域
  10. 準工業地域
  11. 工業地域
  12. 工業専用地域

このうち戸建住宅などの居住施設は、12.工業専用地域以外であれば、基本的にはどこにでも建てることができます。

一方、ホテルや旅館については、1~4の住居専用地域と11.工業地域、12.工業専用地域で建設が規制されています。
そのため、民泊施設として利用しようとする戸建住宅が住居専用地域にある場合は、旅館業の許可は取得できません。

用途変更と建築確認申請

ある建物の使いみち(用途)を別の使いみちに変えるための手続きのことを用途変更と言います。
戸建住宅で簡易宿所の許可を取るということは、建物の使いみちを一般建築物である戸建住宅から特殊建築物のホテル等に変えるということになるので、用途変更にあたります。

既存建築物を特殊建築物に用途を変更する場合は、建築確認申請が必要になります。
建築確認とは、建築基準法に基づき、建築物などの建築計画が建築基準法令や建築基準関係規定に適合しているかどうかを着工前に審査することをいいます。
戸建住宅を簡易宿所として使用する場合は、着工前に建築主事や指定確認審査期間に対して建築確認申請をして、建築主事等が建築確認を行い、確認済証の交付を受けなければ着工できません。
そして、工事竣工後に完了検査を受けて検査済証の交付を受けなければ、建物の使用は認められません。
ちなみに、この検査済証は旅館業の許可申請の際に写しの添付を求められます。

なお、用途変更する部分が200㎡以下の場合は、建築確認申請は不要とされています。
ですから、使用する戸建住宅が200㎡以下の場合や、建物は200㎡を超えても宿泊施設として使用する部分が200㎡以下であれば、建築確認申請は必要ありません。
ただし、そうかといってそのまま宿泊施設として使用できるわけではありません。
200㎡以下の場合でも確認申請の要否に関係なく、建築主は建物を建築基準法令の要求に適合させる法令適合義務を負いますので、建築物を適法に建築基準に適合させる必要があります。

建築確認申請に必要な確認済証と検査済証

さて、用途変更に伴う建築確認申請を行う場合に問題となるのが、既存建築物の確認済証と検査済証の有無です。

確認済証と検査済証の交付を受けている場合は、既存建築物の適法性が確認できるということになるので、なんの問題もなく確認申請をすることができます。
交付を受けていたが、書類を紛失して手元にないといった場合も、確認済証・検査済証の記載台帳証明書を交付してもらうことで代替できます。

一方で、確認済証の交付を受けていない場合は、既存建築物の適法性が確認できないため、用途変更はできません。
ですから、確認済証の交付を受けていない建物が、用途変更に伴う確認申請を必要とする場合は、旅館業の許可申請はできないということになります。

厄介なのが、確認済証の交付は受けているが、検査済証の交付を受けていない場合です。
検査済証の交付のみ受けていないという場合というのは、設計段階では適法性が確認されているが、実際に適法に建設されたかの確認が取れていないということですので、その確認を行う必要があります。
この確認を、建築基準法第12条5項の報告と言います。

建築基準法第12条5項の報告は、建築士に依頼して、確認申請図書をもとに現在の建築物の現況を調査・報告します。
そして、既存建物の適法性が確認できた場合のみ、用途変更をすることができます。
ただ、この調査費用が高額なため、ここで旅館業の申請を諦める方も結構いらっしゃいます。

耐火建築物

ここからは、住宅を民泊施設に用途変更するために必要な建築基準を見ていきます。
まずは、耐火建築物かどうかです。

ホテルや旅館等の用途に使用する建物のことを特殊建築物ということは既に説明しましたが、この特殊建築物はその用途や規模に応じて耐火建築物としなければなりません。

耐火建築物とは、主要構造部を「耐火構造」、または「耐火性能検査法により確認された火災が終了するまで耐える構造」とされた建築物で、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火設備を設けた建築物のことを言います。

ホテルや旅館といった宿泊施設の場合、3階建以上であれば耐火建築物としなければなりません。
また、2階建であっても2階部分でホテル・旅館等として使用する床面積の合計が300㎡以上の場合は、準耐火建築物(耐火構造以外の構造であって、耐火構造に順ずる耐火性能のある構造を持つ建築物)としなければなりません。

一方で一般建築物である戸建住宅は、その場所が防火地域または準防火地域でなければ、この耐火建築物として建てられていません。
元々耐火建築物として建てられていない建物を後から耐火建築物とすることは技術的にとても難しいです。
ですから、民泊施設として使用できる3階建以上の戸建住宅は、防火地域または準防火地域で耐火建築物として建てられた建物であることがほとんどです。

防火区画

防火区画とは、耐火建築物や準耐火建築物に対して、建築物内部で発生した火災や煙が拡大するのを防ぐために、建築物内部を防火上有効な耐火構造や準耐火構造の床、壁防火設備(防火戸)などで区画されたスペースのことです。

防火区画には、面積区画、高層階区画、竪穴区画、異種用途区画の4種類があるのですが、戸建住宅を民泊施設として使用する場合に特に注意したいのが竪穴区画です。

竪穴区画とは、ある階で発生した火災や煙が階段やエレベーターシャフトなど竪穴部分を経由して、上下階方向に拡大するのを防ぐために設けるものです。
竪穴区画が必要となる建築物は、主要構造部を耐火構造または準耐火構造とし、地階または3階以上の階に居室がある建築物では、階段やエレベータシャフト、ダクトスペース等の竪穴部分とその他の部分とを準耐火構造の床、壁、防火設備で区画しなければなりません。
具体的には、階段に面したドアを防火戸に変更するなどの工事を行うことになるのですが、「物理的に防火戸等で区画することが難しい」「費用がかかりすぎる」などの理由で断念することも多いです。

なお、3階建以下で延べ面積が200㎡以下の戸建住宅の場合、竪穴区画を設ける必要はありません。

防火上主要な間仕切壁

防火上主要な間仕切壁とは、居室の相互間の壁や居室と避難経路を区画する壁のことを言います。
この防火上主要な間仕切り壁および火気使用室の壁については小屋裏または天井裏まで、準耐火構造の壁でつくることとされています。

この基準に従うと、戸建住宅を民泊施設に用途変更する場合は、居室間の間仕切壁および居室と避難経路となる通路を区画する間仕切り壁については、全て準耐火構造のものとして、かつ小屋裏や天井裏まで間仕切りをしてやらないといけません。

しかし、そのような工事は現実的ではありませんので、実際には防火上主要な間仕切壁を準耐火構造としなくてもよいように間取りや設備を配置していくことになります。

まず、防火上主要な間仕切壁のことを規定している建築基準法施行令第112条3項では、「(前略)かつ、防火上主要な間仕切壁(自動スプリンクラー設備等設置部分(床面積が二百平方メートル以下の階又は床面積二百平方メートル以内ごとに準耐火構造の壁若しくは法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画されている部分で、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けたものをいう。第百十四条第一項及び第二項において同じ。)その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切壁を除く。)を準耐火構造とし、次の各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。」とされており、

  1. 床面積200㎡以下の階または床面積200㎡以内毎に準耐火構造の壁等で区画されている
  2. その区画に自動スプリンクラー設備等を設けている

場合には、防火上主要な間仕切壁を準耐火構造にしなくても良いことになります。

ただ、これだと前提として準耐火構造の壁等で区画されていなければならないですし、自動スプリンクラー設備等が設けられていないといけないので、この条件をクリアできる戸建住宅はなかなかありません。

そこで、戸建住宅の場合は、建築基準法施行第114条第2項の適用除外規定を活用します。

建築基準法施行第114条第2項では「学校、病院、診療所(患者の収容施設を有しないものを除く。)、児童福祉施設等、ホテル、旅館、下宿、寄宿舎又はマーケットの用途に供する建築物の当該用途に供する部分については、その防火上主要な間仕切壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切壁を除く。)を準耐火構造とし、第百十二条第三項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。」とされており、防火上支障がないものとして国土交通大臣が定めた部分については間仕切壁を準耐火構造にしなくてもよいことが書かれています。

そして、条文中にある国土交通大臣が定める部分について具体的に示したものが、国土交通省告示「間仕切壁を準耐火構造としないこと等に関して防火上支障がない部分を定める件(平成26年国土交通省告示第860号)」と、同じく国土交通省の技術的助言「間仕切壁を準耐火構造としないこと等に関して防火上支障がない部分を定める件等の施行について(平成26年8月22日付け国住指第1784号)」になります。

国はこの告示と技術的助言の中で、例外とされる部分を次のように定めています。

  1. 居室の床面積の合計が100㎡以下の階】または【居室の床面積が100㎡以内毎準耐火構造の壁等で区画された部分】
  2. 各居室に①煙感知式の住宅用防災報知設備若しくは②自動火災報知機または③連動型住宅用防災警報器が設けられている
  3. 1と2の条件を満たす部分についてaまたはbのいずれかに適合すること
    1. 居室から直接屋外避難上有効なバルコニーまたは100㎡以内ごとの他の区画(屋外階段及び避難上有効なバルコニーにあっては、道または道に通ずる幅員50センチ以上通路その他の空地に面するものに限る。「以下、屋外等」という。)に避難ができること
    2. 各居室の出口から屋外等に歩行距離8m(居室および避難経路内装が不燃化されている場合には16m)以内に避難でき、かつ各居室と避難経路とが間仕切壁および常時閉鎖式の戸(ふすま、障子等を除く。)等で区画されていること

つまり、1つの階の居室の床面積の合計が100㎡以下の戸建住宅であれば、自動火災報知器等の設備を設置すれば防火上主要な間仕切壁を準耐火構造としなくてもよいことになります。

まとめ

ここまで、旅館業許可申請を行うにあたって理解しておきたい建築基準法の内容を確認してみましたが、いかがでしたか?

今回は前編ということで、主に都市計画区域内に関する規定や防火に関する規定について確認してみました。
防火に関する規定については、東京都など一部の地域では窓先空地の制度を設けているなど、各自治体で独自の規制を設けている場合もあるので各地の条例等も確認しておくことが重要です。

次回の後編では、引き続き防火に関する規定と避難に関する規定について確認していきたいと思います。

以上、「旅館業と建築基準法(前編)」というテーマで、旅館業許可申請に必要な建築基準法の知識についてご案内しました。

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