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9.182019
新しいアウトドアの形「グランピング」。ところでこれって旅館業?
(この記事は2019年9月18日に更新されました)
本日は「新しいアウトドアの形『グランピング』。ところでこれって旅館業?」をテーマにお話を進めていきます。
この記事は、グランピングサイトを開設する際に注意が必要な、旅館業法および建築基準法の規制について書かれています。
<目 次>
島根県江津市にグランピングサイトがオープン!
広島経済新聞というサイトに、2019年9月17日付けで「広島のビルメンテナンス会社が温泉リゾート施設に「グランピング」サイト開設へ」という記事がアップされていました。
サイト名: 広島経済新聞
URL: https://hiroshima.keizai.biz/
サイト概要: 広域広島圏のビジネス&カルチャーニュース
グランピングのことをご存じない方のために簡単に説明しますと、そもそもグランピングとは、「グラマラス(Glamorous)」と「キャンピング(Camping)」を掛け合わせた造語です。
もとは1800年代後半から1900年代にかけて、当時の金持ちの欧米人がアフリカに狩猟や観光のために訪れた際の宿泊施設として作られたロッジやテントがグランピングの始まりと言われています。
富裕層向けに作られたこともあって、その設備は豪華でかなり贅沢なものでした。当時は本当にお金持ちしか体験できなかった贅沢なものですが、それが今は「グランピング」として広く楽しめるようになったというものです。
グラマラスは「魅力的な」とか「華やか」という意味ですから、華やかで魅力的なキャンプといったところでしょうか。
グランピングの明確な定義などはないようですが、快適で高級感のある豪華なキャンプ施設と言えばわかりやすいと思います。
現在、日本ではグランピング施設というと鉄筋コンクリートの建物やキャビン、テントといったものが主流ですが、中にはコンテナハウスやトレーラーといったものまであります。
もし、グランピングのことをもう少し詳しく知りたいという方は、日本グランピング協会のHPをご覧ください。
アウトドア好きの私としては、このニュースをとてもワクワクしながら拝見したのですが、もともとあった観光施設の再生事業ということですので、観光で地域を盛り上げたい行政書士としても、成り行きを見守りつつ、応援していきたいと思っています。是非、一度泊まりに行きたいですね。
観光事業が面白いのは、これといった明確な観光資源が無くても、その提供の仕方次第で身近にある環境が観光資源に変わってしまうところだと思います。
山や森、川などそのままだと、単なる山奥の自然なのですが、今回のニュースのようにグランピングサイトと組み合わせることで「自然をおしゃれに楽しむことができる」という、他では味わえない観光資源に生まれ変わります。
個人的には、農泊や漁泊とグランピングサイトを組み合わせるのも面白いのではないかと考えています。
農泊や漁泊という「非日常」にグランピングという「おしゃれ」要素が加わって女の子受けしそうですし、場合によっては宿泊施設の設備投資を低く抑えられます。
田園風景や牧草地にグランピングサイトのある風景。これだけでも観光資源になりそうじゃないですか?
グランピングサイトは旅館業にあたるのか?
ところで、もしこれを実際に実現しようとすると、どういった法的課題があるのでしょうか?
パッと思い浮かぶのは「旅館業法」ですよね。
旅館業法第2条では、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」のことを旅館業と定義しています。
となると、グランピングサイトも「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」をしていますので、旅館業ということになります。
でも「グランピングサイトってテントもあるけど、テントも旅館やホテルと同じ扱いになるの?」って思いませんか?
実は、平成27年1月13日に出された経済産業省のグレーゾーン解消制度でこうしたテントについて経産省の見解が示されています。
これによると、「参加者にテント等を貸与提供し、アウトドアレジャー体験の対価として料金を徴収すること(中略)は、旅館業法第 2 条に規定する『施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業』に当たらず、旅館業法の適用を受けない旨の回答を行いました。(後略)」と書かれています。
ここでポイントになるのが、「テント等を貸与提供し」という文言です。
これは、「事業者がテント等を貸し出して、参加者が自ら設置して、使用後に片づけて返却するのであれば、旅館業の定義である『施設を設け』にあたらないので、旅館業法は適用しません。」という意味なのです。
ですから、グランピングサイトのようにテントを常設するということは、「テント等を貸与提供し」ではなく、「施設を設け」ていることになるので、これは旅館業法の適用を受けることになります。
実際に広島県に問い合わせたところ、同じ回答が返ってきました。
建築基準法の規制対象になるのか?
「テントでも旅館業法の規制の対象になるのかぁ。あれ?じゃあ、建築基準法は?」と思われた方、鋭いですね。
その通り、建築基準法の規制の対象になります。例えば、開発予定地が「市街化調整区域」だった場合、開発許可はおりません。
建築確認については、施設の種類によります。
前述した、鉄筋コンクリートやキャビン、コンテナなどは建築確認が必要です。
しかし、トレーラーは移動設置物扱いですので必要ありません。
ちなみに、コンテナも下に移動式設備を設置すれば建築確認は不要になります。
では、テントの場合はどうなのでしょうか?
実は、これが地域によって対応が違います。
ネット等で調べてみても、建築確認が通らずテント泊はやっていないという施設もあれば、建築確認は必要なしということでテント泊をしている施設もある、といった状況のようです。
この理由は、「グランピング」という言葉自体が日本に入ってきたのが2010年頃で、一般の人が耳にするようになったのもここ数年ということで、行政内でも明確な規定が未整備だからです。
実際に私も行政機関に確認の電話をしてみたのですが、まず「グランピングとはなにか」を説明するところから始めないといけませんでした(笑)
どちらにせよ、旅館業許可を取得するためには「宿泊施設の建築確認」を提出しなければなりませんので、建築基準法がらみの確認と対応は必須ということになります。
まとめ
ここまで、グランピングサイトを始めるなら知っておきたい法規制について、旅館業法と建築基準法を取り上げて確認してみました。
グランピングサイトというのは、日本ではスタートしたばかりの新しいサービスです。
そのため、行政としても対応の追い付いていない分野でもあります。
しかし、法令をしっかりと読み込み、根拠をもってその法的課題にあたれば、許可はおります。
本日は、「広島のビルメンテナンス会社が温泉リゾート施設に「グランピング」サイト開設へ」というニュースから、グランピングサイトの法的課題について考えてみました。