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6.262020
基準資産額が足りない場合の対処法
(記載:2020年6月26日)
行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は「基準資産額が足りない場合の対処法」というテーマで、新規・更新登録時に基準資産額が不足している場合の具体的な対処方法について解説していきます。
それでは早速見ていきましょう!
<目 次>
基準資産額の算出方法
まず、はじめに基準資産額について、おさらいしましょう。
基準資産額とは、旅行業を営むものが最低限準備しなければならないの資産の金額のことで、登録種別ごとに旅行業法施行規則第3条にその額が定められています。
基準資産額は、貸借対照表にある資産の総額から、①負債性のある資産(繰延資産、不良債権、営業権)、②負債の総額、③営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金、の3つを除して算出します。
資産の総額-(負債性のある資産+負債の総額+営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金)
実務上では、その登録申請を行う直近の決算期に作成した貸借対照表の数字で判断するのですが、もし基準資産額が定められた金額に足りない場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか?
その1:資産の総額を増やす
基準資産額とは、大きく捉えると資産と負債の差額ですから、基準資産額が不足する場合は、資産の総額を増やす、もしくは負債の総額を減らすなどにより調整することになります。
そのうち資産の総額を増やす方法は、以下のとおり3つあります。
増資
増資とは、企業が資本金を増加させることをいいます。株式を公開している上場企業であれば、広く一般に出資を募ることもありますが、未上場会社などは、通常、株主である役員が出資をするパターンがほとんどです。
決算後に増資を行った場合は、添付資料として「増資を行ったことが登記された登記簿謄本」が必要になります。
贈与
贈与とは、当事者(贈与者)の一方がある財産を無償で相手方(受贈者)に与える行為を言います。現金以外にも不動産なども贈与の対象になります。
決算後の贈与により資産額を増やした場合は、添付資料として「その事実が記載された公正証書(当事者間の契約書だけでは不可)」が必要です。
また、現金の贈与を受けた場合は、添付資料として「入金の事実を証明する書類(預金通帳や取引明細証明書等)」が必要になります。
所有不動産の再評価
もし、資産の中に計上されている不動産の簿価が現在の評価額よりも低い場合は、所有不動産の再評価を行うことで資産の総額を増やすことができます。
決算後に所有不動産の再評価を行った場合は、添付資料として「不動産鑑定士による不動産鑑定書」または「固定資産評価証明書」が必要になります。
その2:負債の総額を減らす
次に負債を減らす方法です。負債を減らす方法には、債務免除というものがあります。
民法第519条には「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。」とあり、債権者がその権利を放棄することで債務者の債務が免除されます。このことを債務免除といいます。
特に中小企業では、経営者が自ら経営する会社に対して貸し付けを行っている場合が多く、この貸付債権を放棄することで負債を減らすことができます。
また、親族や友人等からの借り入れや親しい会社からの融資などがある場合は、債務の放棄をお願いするということも考えられます(この場合、債務を放棄する側にもメリットがある場合もあります)。
決算後に債務免除を行った場合は、添付資料として「債務弁済に係る公正証書」が必要になります。
その3:新たに会社を設立する
既存の会社でどうしても基準資産額を満たせないという場合は、新たに会社を設立して旅行業登録を行うというやり方もあります。ただし、会社設立を行ってから旅行業登録を行うことになるので、既存の会社で旅行業を始めるよりも時間も費用もかかります。
また、更新登録で基準額が満たせず、やむを得ずこのような手段を取る場合、新会社の旅行業登録が完了するまでの間は、旅行業の営業はできません。ですから、特に更新登録にあたる年度については、早めに自社の決算の着地がどのくらいになるのかを予測して、事前の対策を取られることをお勧めします。
まとめ
さて、ここまで基準資産額が不足した場合の調整の仕方についてご案内してきましたが、いかがだったでしょうか?
今回ご案内した、増資・贈与・不動産価格の再評価・債務免除については、税法上、特別な対応が必要となる場合もありますので、顧問税理士等とも相談しながら対処されることをお勧めします。
以上、「基準資産額が足りない場合の対処法」というテーマで、新規・更新登録時に基準資産額が不足している場合の具体的な対処方法について解説しました。