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旅行業登録に必要な定款の目的とその根拠

(記載:2020年6月25日)

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は「旅行業登録に必要な定款の目的とその根拠」というテーマで、法人が旅行業登録を行う際に必要となる定款の目的について解説していきます。

この記事は、旅行業登録を検討している法人や会社設立を予定されている方に向けて作成しています。
それでは早速見ていきましょう!

定款の目的とは

会社を設立する際には、会社の基本的なルールである定款を作成します。

この定款に記載する事項には、必ず記載しなければならず記載が無ければ定款自体が無効となっていまう絶対的記載事項と、記載が無くとも定款自体は無効にならないが、記載が無ければその効力が否定されてしまう相対的記載事項、そして、これら以外の記載してもしなくてもよい事項である任意的記載事項の3種類があります。

会社法第27条には、「株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。」とあり、絶対的記載事項として以下の項目をあげています。

絶対的記載事項一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所

このことから、会社設立の際には、必ず目的を決めておかなければなしません。

絶対的記載事項のひとつである目的とは、この会社がそもそも何をする会社なのかということを明確にするものです。ですから目的に記載する内容は具体的なものでなければならず、包括的な記載では不十分であるとされています。

ところで、原則として会社は定款に定めた目的の範囲内でのみ事業を営むことができるのですが、定款の目的に記載のない事業を行った場合、罰則を受けることはあるのでしょうか?

実は、会社は定款の目的にない事業を営むことはできないことになってはいますが、会社法等に目的に無い事業を行った場合の罰則規定はなく、罰則をうけることはありません。

とはいうものの、目的に無い事業を営むことは違法行為ですから、会社設立の際には将来的に手掛けることになるであろう事業は事前に目的として記載しておくのが良いでしょう。

旅行業を営む場合の目的の文言は?

それでは、会社で旅行業を取り扱う場合は、どのような文言を記載すればよいのでしょうか?

各自治体の旅行業登録の手引きや手続きを紹介したHP等には、「旅行業」もしくは「旅行業法に基づく旅行業」のどちらか一方の文言を記載するよう案内しています。

ですので、弊所でも定款の目的には、このどちらか一方を記載するようご案内しています。

ところで、旅行業登録を行う法人の定款の目的を「旅行業」もしくは「旅行業法に基づく旅行業」のどちらかとするという法的根拠がどこにあるかご存じですか?

旅行業法第4条第2項には、「申請書には、事業の計画その他の国土交通省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない」とされており、添付書類は国土交通省令で定めるとされています。

これを受けて国土交通省令である旅行業法施行規則第1条の4第1項には「法第4条第2項の国土交通省令で定める事項を記載した書類は、次のとおりとする」として、必要とされる添付書類のひとつとして「定款または寄付行為」をあげています。

ただ、施行規則には「旅行業登録には定款が必要」というは書かれていますが、定款の目的については特に触れらていません。

次に旅行業登録における審査基準の書かれた旅行業法施行要領を確認しますが、施行要領には定款の審査基準ついて触れられている項目はありません。

また、私の事務所のある広島県の旅行業法施行細則にも、定款の目的について規定する条文はありません。全ての自治体の旅行業に関する条例や細則を確認したわけではないので、絶対とは言い切れませんが、私の確認したところ、どこの自治体も特に条例で定款の目的について規定していません。

それでは、いったい何を根拠に、定款の目的は「旅行業」もしくは「旅行業法に基づく旅行業」のどちらか一方を記載するとされているのでしょうか?

実は、定款の目的の文言は、各自治体の内部マニュアルで規定されている事項なのです。

この件について観光庁に問い合わせたところ、「観光庁の内部マニュアルでは、定款の目的の記載について、「旅行業」「旅行業法に基づく旅行業」「旅行業法に基づく旅行業代理業」等とされていて、必ずしもこれらの通りの記載でなければならないというわけではない」ということでした。

ここからは私の想像なのですが、おそらく国のマニュアルを参考にした自治体が、定款の目的の書き方について「旅行業」「旅行業法に基づく旅行業」として裁量の余地を残すと個別具体的な事例が出てきた場合の判断基準を別途作成しなければならないことや、会社の事業目的を具体的にすることが会社法に定められた定款の目的の趣旨であることから、あえて「旅行業」もしくは「旅行業法に基づく旅行業」のどちらかを選択させるようにしたのではないかと思います。

ただ、定款の目的の文言が限定されていることについて法的根拠はありませんが、スムーズに登録手続きを進めたいのであれば「旅行業」「旅行業法に基づく旅行業」のどちらかを記載されることをお勧めします。

目的の記載の仕方

たまに、旅行業と旅行業代理業の両方を取り扱うということで、目的の記載の仕方を、「旅行業法に基づく旅行業及び旅行業代理業」と記載しても良いかという質問を受けるのですが、私は別々に記載することをお勧めしています。

理由は、ふたつあります。

ひとつは、別々に記載するよう指導している自治体があるからです。例をあげると大阪府は、「旅行業法に基づく旅行業及び旅行業代理業」という記載を認めていません。

もし、定款の目的が「旅行業法に基づく旅行業及び旅行業代理業」となっている法人があった場合は、宣誓書を提出させ、期日までに定款の目的を訂正させています。

ふたつめは、会社登記を行う法務局の担当から別々に記載することを求められる場合があるからです。

私の事務所のある広島県では、旅行業登録を受け付ける県の観光課は「旅行業法に基づく旅行業及び旅行業代理業」という文言を認めているのですが、法務局の担当者が、この「及び」で繋げることを嫌がるため、定款を作成する際は分けて記載しています。

スムーズに申請を進めるためには、こうしたところにも気を配ると良いかもしれません。

まとめ

さて、ここまで旅行業登録を行う際に必要となる定款の目的に記載する文言やその法的根拠等についてご案内してきましたが、いかがだったでしょうか?

今回は、定款の目的の書き方に法的根拠がなく、内部マニュアルで書き方を指定しているということをご紹介しましたが、これは旅行業登録手続の煩雑化を防ぎながら会社法の趣旨も拾い上げるという行政の努力の痕跡なのかなぁと思います。

以上、「旅行業登録に必要な定款の目的とその根拠」というテーマで、法人が旅行業登録を行う際に必要となる定款の目的について解説しました。

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