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広島県に宿泊した観光客の満足度は全国9位、でも宿泊施設は…。実はここにビジネスチャンス有り!!

(この記事は、2019年9月15日に更新しました)

今日は、「広島県に宿泊した観光客の満足度は全国9位、でも宿泊施設は…。実はここにビジネスチャンス有り!!」というテーマで、お話を進めていきます。

2018年全国宿泊観光客満足度ランキング。第9位!

広島の地方民放TV局で「広島県の宿泊観光客『満足度全国9位に上昇』」というニュースが紹介されていました。
このニュースによると、2018年度の広島県の宿泊観光客の満足度は87.1%で、全国9位とのことでした。
民間の研究機関の調査としか記載が無かったので、調査結果そのものを確認できていないのですが、上昇ということですから、広島の観光産業のクオリティーが上がっているということが言えるのだと思います。

ところで、このニュースの中で一つだけ気になった記載があります。それは「宿泊施設への満足度は、全国平均を大幅に下回り、43位」というところです。
43位ということは、下から4番目ということですから、宿泊施設だけでいうと全国でも最低レベルの満足度(というか満足していない)ということになります。
今日はその辺りを深堀りしていきたいと思います。

広島の宿泊施設の満足度はなぜ低い?

まず、(株)日本政策投資銀行「2018年度版DBJ・JTBFアジア・欧米豪 訪日外国人の意向調査~西日本豪雨が中国地方訪問希望者に与えた影響~」によると、外国人の広島県への旅行に対する不安材料として、1位:言葉が通じるか不安、2位:滞在費(現地での費用)が高い、3位:渡航費用が高い、と2位と3位で費用面での不安があげられています。滞在費が高いことが懸念されていることから、宿泊費についても割高に感じているのかもしれません。

では、次に広島県の旅館の客室数を確認してみましょう。厚生労働省「衛生行政報告例」によると2018年3月現在の広島県の客室数は9,649室で、全国29位です。広島県の2018年の延べ宿泊者数は全国15位(観光庁:2018年宿泊旅行統計調査参照)ですから、なんとなく客室自体が足りていないのではないかなぁという気がしますよね。
実際、同じく観光庁:2018年宿泊旅行統計調査にある都道府県別宿泊施設タイプ別客室稼働率を確認すると、広島県のホテルの稼働率は、66.2%で全国第6位です。宿泊タイプ別で見ても、「旅館」「リゾートホテル」「ビジネスホテル」「シティホテル」「簡易宿所」の全てのカテゴリーで全国平均値を上回っていて、その中でも特にシティホテルの稼働率は84.9%で全国2位、ビジネスホテルは79.5%で全国7位となっており、稼働率の高さが伺えます。
(宿泊施設タイプについて)

  • 旅館 和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所以外のもの。
  • ホテル 様式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所以外のもので、以下の3種類に分類されます。
    1. リゾートホテル ホテルのうち行楽地や保養地に建てられた、主に観光客を対象とするもの
    2. ビジネスホテル ホテルのうち主に出張ビジネスマンを対象とするもの
    3. シティホテル ホテルのうちリゾートホテル、ビジネスホテル以外の都市部に立地するもの
  • 簡易宿所 宿泊する場所を多数の人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業のもの。

宿泊施設の稼働率が高いということは、ホテルが不足しているということですから、必然的に料金も高止まりしているのではないかと考えられますよね。そして、高いお金を払った分、ホテルへの期待値も上がりますから、通常通りのサービスを提供したとしても、サービスを受ける側からすると「高い割には普通だった」と満足度も低くなるという悪循環が繰り返されているのかもしれません。上記の意向調査は外国人を対象としたものなので、必ずしも日本人が高いと感じているかどうかはわかりませんが、おそらく高いと感じられている日本人も一定数いらっしゃるのではないかと思います。
そして、稼働率が高いということは客室が不足しているということですから、そもそも広島に宿泊することを諦めている層があることも予想されます。

もうひとつ、広島の滞在費が高いと感じられる理由として、広島の外国人旅行者の構成にも理由があるのではないかと思います。前回のブログでも書きましたが、広島県を訪れる外国人旅行者の4割は、欧米人およびオーストラリア人です。彼らの宿泊に対する意識というのは、「泊まれればいい」という傾向があります。どちらかというと、宿泊施設へのこだわりは高くありません。
これは個人的な話なので参考程度に紹介しますが、私の知り合いのお嬢さんがフランス人と結婚したのですが、そのフランス人の彼が日本が大好きで、よく家族を連れて旅行に出かけるそうです。すると予約するホテルがものすごく質素で、日本人である私の知り合いはビックリするそうです。フランスから彼の親御さんが日本に来る際に用意するホテルもやはり質素で、知人としては「私が手配した方がいいのではないだろうか」と心配になるそうなのですが、親御さんは特に不満はなさそうです。そこで、私の知人がその彼に「どうしてもう少し良いホテルを取らないのか」と聞いたところ「どうせ寝るだけだから、泊まれればどこでもいいじゃない。」と答えたそうです。割と欧米の方は、宿泊施設に対してこういう風に考える傾向にあります。
そうすると、彼らにとって広島の宿泊料金は「高い!」と感じるのかもしれません。

ところで、こうした「低価格で宿泊したい」という需要を取り込むことが期待されている「民泊」ですが、こちらも言うほど安くはありません。試しにAirbnbさんで「エリア:広島市、期間:2019年10月7日~8日、人数:家族4人(大人2人・子供2人)」で検索して、ざっと見たところ、宿泊料・清掃料金・サービス料込みで16,000~20,000円あたりがボリュームゾーンになっているようです(2019年9月15日現在)。一人当たり4~5,000円というところですね。同じ条件で東京都内で探しても、大体同じような金額が出てきますので、割高感は否めないと思います。

実はここにビジネスチャンス

さて、ここまで「広島県は、観光地としては人気があるけど、宿泊施設はいまいちだよ」ということで、その宿泊施設の何が「いまいち」なのかを探ってきました。そして「いまいち」な理由は、「宿泊施設が不足していて宿泊料金が高い」「広島に来る外国人旅行者のニーズとマッチしていない」という2つの理由があるのではないかと考察しました。
ということは、この2つを解消してあげられる宿泊サービスを提供することができれば、他と差別化することができると言えそうですね。
でも、「料金が高いことを解消するために、安い宿泊施設を提供しよう」では、ただの価格競争です。旅行者は旅行先の土地勘が無い方がほとんどですから、駅や観光施設に近いなどある程度便利な場所が好まれます。実は広島の民泊施設も広島市内に集中してます。広島市内はそれなりに地価相場も高いですし、価格競争なんてしたらじり貧になっていくのは火を見るよりも明らかです。

これまでのキーワードは「宿泊施設は足りていない」「低価格を求められている」「宿泊施設にこだわりはない」でした。ただ、これだとサービスの質を落として低価格でいくという方向しか導き出せませんので、ここにもうひとつ「日本独自の文化にふれたい」というキーワードを追加したいと思います。
なぜ、このキーワードが入るかというと、これも前回のブログでも書きましたが、欧米から来日する外国人旅行者は、自国に無い文化的・宗教的な魅力を求めて来ているからです。すると、もし宿泊施設自体にに日本独自の文化にふれられる仕掛けがあれば、宿泊すること自体を観光化することができるので、「宿泊施設にこだわりはない」が消えませんか?
また、もしそんな宿泊施設であれば、彼らは日本の文化を求めてこの施設を利用することになるので、むしろ満足度が高まり「低価格を求められる」こともありません。
場所についても、宿泊地そのものが観光地になるのですから、ある程度市内とのアクセスが確保できていれば、必ずしも都心にある必要はありませんし、そもそも宿泊施設が足りていないので、そこまで大きなマイナスポイントにはならないでしょう。
これであれば、価格競争をすることも無く、外国人旅行者のニーズを満たすこともできます。また、そうしたニーズは一定数の日本人にもあると思います。

例えば「空き家の一棟貸しで、日本のリアルな日常生活が体験できる宿泊施設」といったコンセプトで和文化にふれられる民泊施設はありだと思います。宿泊単価も、むしろ一般のホテルよりも高く設定することができます。個人的には忍者屋敷みたいな、泊まること自体が遊びになるような民泊施設があれば、私も泊まってみたいなぁと思います。
こういった施設なら、日本人にも受けそうですよね。

本日は、「広島県の宿泊観光客『満足度全国9位に上昇』」というニュースから、広島の宿泊施設事情を考察しました。

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