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転貸借契約で民泊を始める際に注意するポイント

(記載:2020年3月4日)

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は「転貸借契約で民泊を始める際に注意するポイント」というテーマで、民泊物件を転貸借契約で賃貸する場合の注意点について解説していきます。

この記事は、転貸借物件で民泊を始めようと考えている方に向けて作成しています。
それでは早速見ていきましょう!

そもそも転貸借契約ってなんですか?

先日、お客様から「転貸借物件で民泊をやらないかという話があるのだが、そんなことができるのだろうか?」というようなお問合せを頂きました。

詳しくお話を聞くと、その話を持ち掛けた人は、物件の賃借人で、もともとはオーナーの了解を得て、自分が民泊を運営していたのですが、自分ではどうもうまくいかないので、うまくやってくれる人に運営を任せて、自分は家賃収入を得ようと考えているとのこと。

そこで、ご相談を下さったお客様に、この話が来たということでした。

話をもらった当初はあまり本気では無かったのですが、実際に物件を見てみると立地や内装などはとても良く、自分であればうまく運営できるのではないかとお客様も結構乗る気になっていました。

ただ、気になるのは、その物件を直接オーナーから賃貸借するわけではなく、賃借人からの又貸しという点です。
そこで、弊所にご相談を頂いたという次第でした。

さて、先ほどの話の中にも出てきた「又貸し」のことを、「転貸(転貸借)」と言います。
転貸借という言葉を辞書で調べてみると、「賃借人が賃借物をさらに第三者(転借人)に使用・収益させること」と書かれています。
まさに「又貸し」のことですよね。

ところでそんな転貸借ですが、実は民法第612条第1項は、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」としていて、賃貸人(つまり所有者・オーナー)の承諾がなければ転貸借はできないと定めています。

また、同条第2項では、「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」とされていて、賃貸人に無断で転貸借を行った場合は、契約が解除されてしまうとされています。

ただ、民法第612条第1項は、逆に言えば、きちんと賃貸人の承諾を得て行うのであれば、転貸借はできるということですから、賃貸人の許可さえあれば、転貸借物件での民泊営業も可能ということが言えます。

転貸借契約ゆえの不安な点

それでは、賃貸人の承諾さえ得ていれば、あとは問題ないのでしょうか?

実は、もうひとつ、賃貸人と賃借人の間で締結された賃貸借契約が終了した場合に、転貸人(賃借人)と転借人の間で締結された転貸借契約がどうなるのかという問題があります。

確かに転貸借契約は賃貸借契約の上に成り立つものですから、賃貸借契約が終わると転貸借契約も終わってしまうのでしょうか?

その点について、法律と過去の判例から見て行きましょう。

パターン①:賃貸借契約の期間満了または解約の申し入れにより、賃貸借契約が終了した場合

この場合、賃貸人(所有者・オーナー)が、転借人に賃貸借契約が終了したことを通知しなければ、転貸借契約を終了させることはできません。(借地借家法第34条第1項)

また、通知すれば即日終了するわけではなく、通知された日から6ヶ月経過することで終了するとされています(同条第2項)。

パターン②:賃貸人と賃借人(転貸人)間で賃貸借契約の終了が合意された場合

この場合、転貸借契約を終了させることはできず、転借人は建物を明け渡す必要はありません。

判例(最判昭和62年3月24日)では、土地が賃貸された後、当該土地の一部が転貸されて建物が建てられ、その後に土地賃貸借契約(原賃貸借契約)が合意解約されたと言う事案において、「特段の事情がない限り、賃貸人は転借人に対して合意解除の効果を対抗できず、したがって賃貸人は賃貸土地の明渡を請求することはできない。」とされています。

これは、そもそも賃貸人も合意の上で転貸借を行っている物件について、転借人の合意もなく、ただ賃貸借契約の終了をもって同時に転貸借契約も終了させるのでは、あまりにも転借人の権利を害するということで、出された判決です。

ですから、こうした場合は、賃貸借契約が終了しても、引き続き転借人は建物を使用・収益することができます。

パターン③:賃借人(転貸人)が賃料を滞納するなどの債務不履行により賃貸借契約が終了した場合

この場合、賃貸借契約の終了と同時に転貸借契約も終了してしまいます。

判例(最判平成6年7月18日)では、「土地の賃貸借契約において、適法な転貸借関係が存在する場合に、賃貸人が賃料の不払を理由に契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない」として、転借人の意向を確認することなく賃貸借契約を解除することを認めています。

そして、判例(最判平成9年2月25日)では「賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する」としていることから、借地借家法第34条第2項に定める6ヶ月の期間の経過も要求していません。

このことから、賃貸人は転借人に事前に通知することなく、建物の返還請求を行えてしまうということになります。

パターン④:賃貸借契約の期間満了または解約の申し入れにより、賃貸借契約が終了した場合

この場合も、基本的にはパターン①と同じく、賃貸借契約終了の通知後6か月経過することで終了します。

ただし、判例(最判平成14年3月28日)では、「一棟のビルを所有し賃貸していた会社が、賃借人からの更新拒絶によって賃貸借が終了したとして、ビルの一室の転借人に対して貸室の明渡等を求めた事案において、①賃貸人が当初から賃借人が第三者にビルを転貸して安定的な賃料収入を得ることを目的として賃貸借契約を締結し、賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約の締結当初から承諾していたものであり、②当該転借人が、上記目的の下に賃貸借契約が締結され、転貸(および再転貸)の承諾がされることを前提として転貸借契約を締結しているときは、賃貸人は、信義則上、賃貸借契約の終了を転借人に対抗できない」として、転貸借契約を終了させることができない場合もあるとしています。

以上のように、一部例外はあるものの、基本的には賃貸借契約が終了すると転貸借契約も終了するというのが原則です。

賃貸借契約と転貸借契約は、親亀とその背中の上にいる子亀との関係に似ています。

親亀がこけると子亀もこけるように、自分の意志とは関係なく物件を明け渡さなければいけないという事態も起こりうる、不安定な状態とも言えます。

転貸借契約を行う際の確認事項

それでは、こうした転貸借契約を行う場合には、どのようにしたら良いのでしょうか?

まず第一は、オーナーとの直接の賃貸借契約にできないかを交渉してみましょう。

そして、それが難しい場合は、賃貸借契約が終了した場合でも引き続き物件を使用・収益できるよう、事前に賃貸人・賃借人(転貸人)・転借人の3者間で「賃貸借契約の終了時には、転貸借契約上の賃貸人の地位および敷金返還債務は賃貸人に承継され、転貸借契約は引き続き存続する。」といった内容の合意書を作成しておくと良いでしょう。

まとめ

さて、ここまで転貸借契約を行う際の注意するポイントについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか?

民泊を始めるというと旅館業法や建築基準法、消防法に目が行きがちなのですが、不動産物件を扱うということでいえば、実は民法や借地借家法などの知識も大切です。

今回の内容は、今話題のサブリース契約の話題でもありますから、不動産運用にご興味ある方も押さえておきたい知識かなと思います。

以上、「転貸借契約で民泊を始める際に注意するポイント」というテーマで、民泊物件を転貸借契約で賃貸する場合の注意点について解説しました。

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