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旅行業登録には、いくら資金が必要なのか?最低限必要な費用を登録種別ごとにご案内します。

(投稿:2019年9月28日、加筆修正:2022年6月2日)

今回は「旅行業登録、いくらかかるの?最初に必要な4つの費用とその金額」をテーマにお話を進めていきます。
この記事を読めば、旅行業登録の際に必要とされる費用の総額がわかりますので、現在旅行業の登録を検討されている方は必見です。
それでは早速見ていきましょう!

お金が関わる項目

まず、登録するにあたってお金が関わる項目は、以下の4つです。

    1. 基準資産額
    2. 営業保証金(または弁済業務保証金分担金)
    3. 登録申請手数料
    4. 申請の際に添付する書類の発行手数料などの雑費

この内、「1.基準資産額」は、直近の財務諸表等でその金額が確認できればよいので、実際に支払いが必要となる項目は、残りの3項目です。

それでは、項目ごとに解説していきましょう。

基準資産額

旅行業は、比較的少ない資金で始めることができる反面、倒産等で旅行者の被る被害は比較的大きいことから、事業者の経営が健全であることを確認するため、最低限保持しなければならない資産の基準を設けています。
この経営の健全性を担保するために、旅行業を営むものが最低限準備しなければならないの資産の金額のことを基準資産額と言います。
基準資産額を満たす資産を持っていなければ、登録することはできません。

基準資産額は、登録の種別ごとに金額が決まっていて、以下のようになります。

基準資産額(単位:万円)
第1種 第2種 第3種 地域限定
3,000 700 300 100

この基準資産額は、上記の金額をどこかに支払うというわけではなく、帳簿上でこの金額が確認できることが求められています。

基準資産額は、以下の式で求めます。

基準資産額=資産-負債の総額-不良債権-繰延資産-営業権-営業保証金(または弁済業務保証金負担金)

貸借対照表で説明すると斜線の部分が基準資産額を表す部分になります。

この部分の金額が、第3種であれば300万円以上、地域限定であれば100万円以上必要です。

営業保証金(または弁済業務保証金負担金)については後ほど説明しますので、それ以外の項目について簡単に説明していきましょう。

「資産」とは、現金、預貯金、株式、債券、土地等の個人や法人が保有する全財産のことです。

「負債の総額」とは、借入金、未払金等の個人や法人が負担する債務のことです。

「繰延資産」とは、資産計上されているものの本質的には費用であるものをいいます。
例えば開業費は、これから始める事業の初期投資ですから、いきなり経費として計上するのではなく、資産として計上し、期間を定めて償却するため、名目上は資産として扱いますが、実際には費用的意味合いの強い支出であると言えます。
こうした資産のことを繰延資産と言います。

「不良債権」とは、1年以上回収がされていない貸付金、売掛金などで回収不能な債権のこです。
例えば、取引先の倒産等で焦げ付いてしまった売掛金や閉鎖されたゴルフ場の会員権などがこれにあたります。

「営業権」とは、無形資産を買収した際の金額が、売却会社の純資産を上回る分です。
のれんと呼ばれる場合もあります。

こうしてみると、基準資産額とういのは、払うものを全て払った残りの資産のうち、本当に使える資産の総額を指していると言えます。

実際に基準資産額を算出する場合、個人事業主であれば「財産に関する調書」という様式に従って計算していきます。
提出の際には預金残高証明書や不動産評価額証明書等、その資産額を客観的に確認できる書類も必要になります。

法人の場合は、確定申告で作成する貸借対照表で確認します。
こちらも根拠となる書類が必要になりなすので、確定申告書を一式提出することになります。

こうして算出された金額が基準資産額を満たして、初めて旅行業登録をすることができます。

営業保証金(または弁済業務保証金分担金)

旅行業登録を行う際には、必ず「営業保証金を供託」するか、もしくは旅行業協会に入会して「弁済業務保証金分担金を納付」しなければなりません。
こちらは支払いが生じます。

ひとつづつ説明していきましょう。

①営業保証金

営業保証金とは、旅行業者等が倒産などの理由で債務不履行に陥った場合に備えて、あらかじめ旅行業者が金銭的担保として国に供託する金銭等のことを言います。
もし旅行業者が倒産などで旅行サービスを提供できないといった事態に陥った場合には、この営業保証金の範囲内で旅行者の旅行代金等を保証します。
営業保証金は、登録する旅行業の種類や前事業年度の売上に応じて金額が変わるのですが、最低でも第1種で7,000万円、第2種で1,100万円、第3種で300万円、地域限定旅行業で15万円を供託します。

前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額 営業保証金の額(単位:万円)
第1種 第2種 第3種 地域限定
400万円未満 7,000 1,100 300 15
5,000万円未満 7,000 1,100 300 100
2億円未満 7,000 1,100 300 300
2億円以上、4億円未満 7,000 1,100 450 450
(以下略)
②弁済業務保証金分担金

弁済業務保証金分担金とは、営業保証金を供託する代わりに、旅行業協会に入会して協会に納める金銭のことを言います。
この弁済業務保証金分担金を旅行業協会に納めると、旅行業協会が弁済業務保証金として国に供託します。
弁済業務保証金分担金の額は、営業保証金の5分の1ですので、最低でも第1種は1,400万円、第2種は220万円、第3種は60万円、地域限定は3万円を協会に納めます。

前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額 弁済業務保証金分担金の額の額(単位:万円)
第1種 第2種 第3種 地域限定
400万円未満 1,400 220 60 3
5,000万円未満 1,400 220 60 20
2億円未満 1,400 220 60 60
2億円以上、4億円未満 1,400 220 90 90
(以下略)

これだけを見ると、旅行業協会に入会した方がお得なように感じますが、そうとも言えません。

実は、旅行業協会への入会にあたっては入会金と年会費を納める必要があります。
旅行業協会には、日本旅行業協会(JATA)と全国旅行業協会(ANTA)の2つがあり、それぞれ入会金や年会費が違います。

JATAの場合、全国一律で登録の種別に関係なく、入会金80万円、年会費35万円です。

ANTAの場合は、少し複雑です。
本部への入会金が第3種旅行業で55万円、地域限定旅行業で40万円、年会費は一律3万円です。
併せて各都道府県の支部への入会が必要なため、支部への入会金や年会費も必要になります。
ちなみにANTA広島県支部は、種別一律で入会金20万円、年会費3万円です。
加えて、各都道府県で設立する協同組合への出資と年会費が必要な場合もあります。
広島県では、協同組合広島県旅行業協会に出資金12万円と年会費3万円の支払います。
なお、出資金は退会時に払い戻しされます。

旅行業協会の種別 入会金および年会費の額(単位:万円)
第1種 第2種 第3種 地域限定
JATA 入会金 80
年会費 35
ANTA 本部 入会金 225 65 55 40
年会費 3
支部
(広島県)
入会金 20
年会費 2
協同組合
(広島県)
出資金 12
年会費 3
合計 入会金+出資金 257 97 87 72
年会費 8 8 8 8

営業保証金の金額と弁済業務保証金分担金の合計金額を比較すると、第1種の登録であればJATA、第2種および第3種の登録であればANTAの方が費用面で有利であることが分かると思います。
地域限定であれば、営業保証金を供託するほうが有利かもしれません。

実際、第1種であればJATA、第2種・第3種であればANTAを利用することが多いです。
ちなみに、入会して受けられる会員特典については、どちらの協会もほどんど差はありません。

登録申請手数料

登録申請手数料とは、各都道府県の窓口に登録申請をする際に納付する手数料のことです。
金額は都道府県によってまちまちが、15,000~25,000円の間であることが多いです。
広島県では23,000円です。
ちなみに東京都は例外的に90,000円ほどかかります。

なお、第1種旅行業の登録には、登録手数料と別に登録免許税として90,000円が必要となります。

登録免許税・登録手数料(単位:円)
第1種 第2種 第3種 地域限定
登録免許税 90,000
登録手数料(広島県) 23,000

申請の際に添付する書類の発行手数料などの雑費

登録申請の際に添付する書類として、個人事業主であれば「住民票」、法人であれば「登記簿謄本」が必要となります。
広島市であれば、住民票は300円、登記簿謄本は600円の手数料がかかります。
そのほかにも書類の印刷代やコピー代、交通費などかかることを考えれば、1,000~2,000円程度と言ったところでしょうか。

費用の合計は?

これまで確認してきた項目をまとめて表にしました。なお、雑費は項目から外しています。

(単位:万円) 第1種 第2種 第3種 地域限定
JATA加入 協会非加入 ANTA加入 協会非加入 ANTA加入 協会非加入 ANTA加入 協会非加入
基準資産額 3,000 700 300 100
営業保証金 7,000 1,100 300 15
弁済業務保証金分担金 1,400 220 60 3
入会金+年会費 115 105 95 80
登録免許税 9
登録申請手数料 2.3 2.3 2.3
準備しておく金額 4,524 10,009 1,027.3 1,802.3 457.3 602.3 185.3 117.3
登録の際の支出額 1,524 7,009 327.3 1,102.3 157.3 302.3 85.3 17.3

基準資産額は、帳簿上確認できればよい金額ですから、実際に支払う金額は「登録の際の支出額」の欄になります。

こうしてみると、第1種・第2種・第3種であれば旅行業協会に入会した方が、登録時の支出額が抑えられることが分かります。一方で、地域限定の場合は必ずしもANTAに入会する方が良いというわけでも無さそうです。

とはいえ、ホテルや運送会社の中には旅行業協会に入会していることを取引条件のひとつにしている場合もありますので、入会するかどうかは慎重に判断することをお勧めします。

まとめ

ここまで、旅行業登録にいくらかかるのかを見てきましたが、いかがだったでしょうか?旅行業登録に必要な費用がご理解いただけたのではないかと思います。

ただし、旅行業はバスや宿の手配をする際に料金を前払いしますし、集客のための宣伝広告費がかかるなど、旅行者から代金をもらう前に多くの費用が発生しますので、営業開始後の3~6か月分の必要経費は、事前に準備しておくことをお勧めします。

本日は、「旅行業登録、いくらかかるの?最初に必要な4つの費用とその金額」をテーマに、登録に必要な費用とその金額について確認してみました。

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