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旅行業法違反とされる場合とその罰則

(記載:2020年7月3日/更新:2023年4月19日)

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は「旅行業法違反とされる場合とその罰則」というテーマで、旅行業法違反の審査基準と無許可営業に科される罰則の内容ついて詳しく解説していきます。

それでは早速見ていきましょう!

旅行業法は気づかずに違反してしまう!?

これまでも当ブログで何度か旅行業法の違反事例を取り上げてきましたが、旅行業法の違反事例に共通しているのが「一見、違反に見えない」という点です。

例をあげると…

・登山用品の専門店が企画した宿泊付き登山ツアー
・NPO法人等が被災地にボランティアを派遣するためにバス業者を手配したボランティアバス(のちに合法化)
・自治体が関与する市内の小学生を対象としてサマーキャンプ(のちに合法化)
・事業者が全国の小学生を対象として実施しようとした中学受験合宿
・お寺が檀家を対象とした巡礼ツアー
・旅館がバス会社に委託して、利用者に実費のみを請求する送迎バスの運行

この他にも、県の教育委員会が地域の子供や父兄を対象として行う文化交流ツアーなども、旅行業に違反しているとして取り上げられたことがあります。

さて、これらの事例を見て、皆さんは「法律違反」という言葉に感じる「悪質さ」や「狡猾さ」みたいなものを感じますか?

おそらく、「これが違反なの?」という感覚なのではないかと思います。実は私も同じような感覚を持っています。

しかし、旅行業法に照らし合わせると、違法もしくは違法性があると判断されてしまうのです。

旅行業違反の審査基準

それでは、なぜこれらの事例が違法もしくは違法性があると判断されてしまうのかについて、「審査基準のわかりにくさ」という視点から見ていきましょう。

旅行業法第2条第1項には、「この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業をいう。」とあり、法第2条第1項第1~9号の各号の行為を報酬を得て、事業として行う場合、旅行業であると定めています。

旅行業法第2条第1項この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
一 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
(中略)
九 旅行に関する相談に応ずる行為

各号の行為をまとめてザックリ言うと「旅行者(消費者)のために、運送・宿泊などのサービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、または取次ぎなどを行う行為」と言えるでしょう。

そして、法第2条第1項各号の行為を、「報酬を得て(報酬性)」「事業として(事業性)」行うと、これは旅行業にあたることになります。

確かに違反事例をみると、法第2条第1項各号の行為を行っています。ただ、全ての事例について「報酬を得ている」「事業性がある」かと言えば、そうではないものも見受けられます。

例えばボランティアバスや旅館の送迎バスなどは、報酬を得ていはいないように見えます。また、違反事例の中には事業性がないように感じる事例も散見されます。

そこで、旅行業法における「報酬を得ている」「事業性がある」とは、どういった状態をいうのかを、もう少し詳しく見て行きましょう。

報酬を得て、とは?

旅行業法の審査基準である旅行業法施行要領には、報酬について「事業者が法第2条第1項各号に掲げる行為を行うことによって、経済的収入を得ていれば報酬となる」とあります。

ここでいう経済的収入とは、金銭の収受があるということであって、利益の有無は関係ありません。ですから、「実費だけをもらった」というような場合でも、経済的収入は得ているとみなされます。

ですから、利益をのせることなく、実費を参加者で均等割りして参加費用として回収したような場合でも、「報酬を得ている」ということになります。

事業として行う、とは?

法第2条第1項の各号を取り扱うことが事業に該当するかの判断基準について、平成30年に観光庁より出された旅行業法施行要領の一部改正(平成 30 年7月改正)に関する参考資料では、「個別の事例ごとに営利性募集の不特定多数性反復継続性の3つの要件を総合的に勘案し、当該事例が事業として成立するかどうかを判断する。」とあります。

まず、営利性です。これは前出の「報酬」にもリンクするのですが、各号の行為を取り扱うことで利益を得ているかを判断しています。ここでは対価の設定にもふれられていて、例えば「旅行者からは報酬をもらわないが、紹介した事業者からキックバックをもらっている」などといった場合、旅行者から直接的には利益を得ていませんが、結果行為を取り扱うことで利益を得ていることから、営利性があると判断されます。

次に、募集の不特定多数性です。前出の事例にある中学受験合宿は、ここに該当します。制限を設けず、全国の小学生を対象とした点が、募集の不特定多数性が認められるとされました。一方で、自治体が関与する市内の小学生を対象としてサマーキャンプについては、募集の対象を自治体が管轄する地域の小学生に限定したことで、募集の不特定多数性が認められないとされました。

最後に反復継続性です。反復継続性について前出の旅行業法施行要領の一部改正(平成 30 年7月改正)に関する参考資料では、「一回のみの実施ではなく、継続の意思を持って行うことをいう。」としています。例えば年に一回の1度の開催であれば、反復継続して実施しているとは言えないとされています。一方で、1度しか実施していなくても、継続の意思があると認められれば反復継続性はあると判断されます(例えば、広告を出している、旅行業の看板を出している等は、反復継続性があると言えます)。

そして、これらの「3つの要件を総合的に勘案し」とされていますので、3つ揃っているから事業性があるとか、揃っていないから事業性がないということではなく、個別の事例ごとにこの3つの要件から事業性の有無を判断することで、当該事例が「事業」として成立するかを判断します。

ですから、最初にあげた事例も、画一的に事業性の有無を判断したのではなく、個別の事例ごとに事業性を判断しています。

 

このように、「実費だけしかもらっていなくても報酬とみなされる」「事業性の判断が個別の事例ごとに判断されるため、事業として行っているつもりがなくても、事業として成立していると判断されることがある」といった点が、一般の感覚では旅行業法に抵触しないと感じていても、結果として無許可営業をしていたということになってしまっていると考えられます。

ですから、旅行者(消費者)の代わりに運送サービスや宿泊サービスを手配する場合は、「受け取る金品に報酬性はないか」「行為に事業性は無いか」ということをよく検討してから進めないと、知らず知らずのうちに違法状態になりかねません。

無許可営業をした場合の罰則

ところで、旅行業を無許可で営業した場合、どうなるのでしょうか?

旅行業法第3条は、「旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない。」として、旅行業を行う者は旅行業登録を受けなければならないことになっています。

しかし、この法第3条に違反して登録を受けず営業(無許可営業)をした場合は、以下の同法第74条第1項第1号に該当します。

旅行業法第74条次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三条の規定に違反して旅行業を営んだ者
(以下略)

つまり、無許可営業を行った場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されることになります。

まとめ

さて、ここまで旅行業とみなされる要件と無許可営業をした場合の罰則について見てきましたが、いかがだったでしょうか?

旅行業務とは、運送サービスや宿泊サービスを消費者に代理して契約を締結し、または取次ぎなどを行う行為あり、ここで言う消費者は広く一般の消費者であり、旅行者に限られるわけではありません。ですから、対象が旅行者ではなくとも運送・宿泊サービスを代わりに手配する場合は、旅行業法に抵触しないかを確認する必要があるといえるでしょう。

もし、ご自分の事業やビジネスモデルが旅行業に該当するかもと不安な方は、以下の記事でご自身の事業が旅行業に該当するかどうかを判定する目安を紹介していますので、是非ご覧ください。

旅行業法に該当する行為とは?旅行号登録が必要かどうかを解説します

今回は「旅行業法違反とされる場合とその罰則」というテーマで、旅行業法違反の審査基準と無許可営業に科される罰則の内容ついて解説しました。

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