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『観光庁長官の定める区域』を正しく理解して、実施区域を拡大しよう!

(記載:2020年4月17日)

行政書士つなぐ法務事務所の時村公之です。
今回は「『観光庁長官の定める区域』を正しく理解して、実施区域を拡大しよう!」というテーマで、第3種旅行業や地域限定旅行業の業務の実施区域について解説していきます。

この記事は、第3種旅行業や地域限定旅行業の取得を検討されている方に向けて作成しています。
それでは早速見ていきましょう!

まずは「観光庁長官の定める区域」という文言が出てくる条文を確認

最初に「観光庁長官の定める区域」とという文言が、条文のどこに出てくるのかを確認してみましょう。

「観光庁長官の定める区域」と言う文言は、以下の条文の中に出てきます。

第二条第一項各号に掲げる行為のうち企画旅行(一の企画旅行ごとに一の自らの営業所の存する市町村(特別区を含む。以下同じ。)の区域、これに隣接する市町村の区域及び観光庁長官の定める区域(次号及び第十条の五において「拠点区域」という。)内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの以外のもの」

この条文は旅行業法施行規則第1条の3第1項第3号で、第3種旅行業の業務範囲を規定した条文です。

さて、ちょっとわかりにくい条文ではあるのですが、前後の条文と見比べながら読み込んでいくと、第3種旅行業において企画旅行(募集型)を取り扱える実施区域は、「一の企画旅行ごとに一の自らの営業所の存する市町村特別区の区域」「これに隣接する市町村の区域」「観光庁長官の定める区域」の3つの区域であることがわかります。

そうすると、営業所のある市区町村と、その隣接市区町村が実施区域であることはわかるのですが、この条文だけでは「観光庁長官の定める区域」が具体的にどの区域を指しているのかが分かりません。

もう少し詳しく見て行きましょう。

観光庁長官の定める区域とは?

この観光庁長官の定める区域については、法令ではなく、旅行業法施行規則第一条の三第三号の規定に基づき観光庁長官が定める区域という告示で定められています。

この告示で示された観光庁長官の定める区域を簡単にまとめると、以下の3つの区域になります。

①自らの営業所がある市町村から直通の定期航路のある離島。

②自らの営業所がある市町村から直通の定期航路のある半島。ただし、営業所がある都道府県および隣接都道府県内にある半島に限る。(一部例外規定あり)

③地域内及び地域間の交流の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点の存する市町村の区域。

①および②は営業所をおいた市区町村に港がある場合、そこから離島や半島に直通の定期航路があれば、その離島や半島は観光庁長官の定める区域となります。

では、「③地域内及び地域間の交流の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点の存する市町村の区域」とは、どこの区域でしょうか?

告示の中で、③の区域は下記のように書かれています。

「地域内及び地域間の交流の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点(以下「交通拠点」という。)の存する市町村(特別区を含む。以下同じ。)の区域(自らの営業所の存する市町村の区域及びこれらに隣接する市町村の区域を除く。)(以下略)。」

このことから、③の区域とは営業所のある市区町村と隣接市区町村以外の区域で、交通拠点のある市区町村ということになります。

ポイントは「交通拠点」

それでは、「交通拠点のある市区町村とは、どこを指すのか」を理解するために、交通拠点について確認していきます。

この交通拠点については、平成十九年国土交通省告示第四百五号第二号に基づく第三種旅行業務及び地域限定の範囲についてという通達で説明されています。

この通達の2-①では、「交通拠点とは、一般に、駅、空港、港湾、バスターミナル(バス停留所のうち、複数の路線の発着点として旅客の乗降、乗り換え等の用に供するものをいう。)等が該当するが、これに限らず、地域の交通・観光の実態に応じて交通拠点を選択することは妨げない。」と記されています。つまり、駅・空港・港湾・バスターミナルなどの交通網や輸送の拠点となる施設のことを交通拠点と定義しています。

そして、通達2-②では、「自らの営業所から「最寄り」の交通拠点の存する市町村からの発着が認められる。(以下略)」と記されていますので、営業所の最寄りの交通拠点から交通の発着が認められる交通拠点のある区域については、観光庁長官の定める区域として認められるということになります。

つまり、営業所のある市区町村および近隣市区町村以外の地域であっても、交通拠点で結ばれている市区町村であれば、当該市区町村は観光庁長官の定める区域にあたり、拠点区域として認められるので、業務の実施区域に含むことができることになります。

ただし、通達3-①では、「交通拠点の存する市町村の区域内であれば、いずれの交通拠点からであっても、発着は認められる。」とありますので、その反対解釈として発着以外は認められません。つまり、交通拠点の存する市町村では発着のみで、観光地をまわることはできないということになります。
(参照:旅行広告・取引条件説明書面ガイドラインp194「付録②第三種旅行業者の実施する募集型企画旅行、地域限定旅行業者の旅行業務の取扱いについて」内の「注(1)交通拠点について」)

具体的にはどこまでが実施区域になるのか?

とは言うものの、まだわかりにくいと思いますので、具体例でご説明しましょう。弊所が広島県にありますので、広島市に第3種旅行業の営業所を設けた場合の具体例を2つご案内します。

具体例①

まず、観光庁長官の定める区域以外の実施区域は、営業所のある広島市と隣接する市区町村(呉市・東広島市・廿日市市・安芸高田市・安芸太田町・北広島町)になります。

ところが、中国地方の真ん中にある三次市は広島市と隣接していない為、通常だと募集型企画旅行の実施区域には含まれないことになります。

しかし、広島市と三次市は広島バスセンターと三次駅間で高速乗合バスが運行しています。そうすると、三次市は交通拠点間の発着が認められる区域とみなされ、上記告示の「地域内及び地域間の交流の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点の存する市町村の区域」に該当するので、三次市は観光庁長官の定める区域とみなされ、実施区域に含めることができます。

ただし、三次市を発着地として広島市や近隣市町村を周遊することはできますが、逆に広島市を発着地として三次市を周遊することはできません。

また、この二つの市は高速バスで結ばれていますが、実際の移動手段はチャーターバスでもその他の方法でも構いません。

具体例②

営業所を設けた広島市と瀬戸内海を挟んだ向こう側にある愛媛県松山市とは、広島港と松山観光港間で高速艇が運行しています。

するとこの場合も交通拠点間の発着が認められる区域とみなされるので、募集型企画旅行の実施区域に含めることができます。

この場合も、松山市は発着地とすることのみができて、松山市を周遊することはできません。

また、上記のように交通拠点で結ばれていれば、都道府県を超えることも問題ありません。

観光庁長官の定める区域を活用する際の注意点

ただし、気を付けておかないといけないことが1つあります。それは、交通拠点のある市区町村に向かう途中でそれ以外の区域に立ち寄ることができない、ということです。

例えば、営業所を広島市に設けた場合に、広島市~福山市間はローズライナーという高速バスで結ばれていることから、福山市を催行地とすることができるので、広島市を発着地として福山市を催行地としたバスツアーを企画したとします。

その際に広島市とその隣接市区町村および福山市以外にある場所への立ち寄りが認められませんので、この区域に含まれないサービスエリア等への立ち寄りが認められません。

実際のところは、「トイレ休憩だけであれば認める」「計画的に立ち寄ることは認められないが、緊急的にトイレ休憩等で立ち寄る場合は違法とはしない」など、自治体によって運用の仕方が違いますので、各自治体に問い合わせてみることをお勧めします。

まとめ

さて、ここまで観光庁長官の定める区域について、特に「地域内及び地域間の交流の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点の存する市町村の区域」がどの区域のことを指しているのかを詳しく解説してみましたが、いかがだったでしょうか?

今回ご案内した、「地域内及び地域間の交流の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点の存する市町村の区域」は平成30年に告示を改正する形で施行されました。

これにより、これまでは実質「営業所のある市区町村および隣接市区町村」内に限られていた第3種旅行業や地域限定旅行業の実施区域が、大きく広がることになりました。

この仕組みをうまく活用すれば、交通拠点で結ばれたエリアからの集客がしやすくなり、より魅力のある着地型企画旅行を開発することが可能です。

ぜひ、上手に活用してみてください。

以上、「『観光庁長官の定める区域』を正しく理解して、実施区域を拡大しよう!」というテーマで、第3種旅行業や地域限定旅行業の業務の実施区域について解説しました。

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